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失われた野生を取り戻す。「リワイルディング」が描く自然の未来

Kenny
| 2026/10/25
リワイルディングは、損なわれた生態系を自然自らの回復力で再生させる取り組み。ネイチャーポジティブ時代の新しい自然保護として注目されています。

リワイルディングとは?

「リワイルディング(Rewilding)」とは、開発や乱獲によって損なわれた生態系を、自然そのものが持つ回復力を生かして再生させる取り組みのことです。日本語では「再野生化」と呼ばれることもあります。

これまでの自然保護は、残された自然を柵で囲って守ることが中心でした。これに対してリワイルディングは、川の流れや動物どうしの関係といった「自然のはたらき」そのものを取り戻すことを目指します。

この考え方は、1990年代のアメリカで保全生物学者や環境活動家によって広まったとされています。手法は大きく2つに分けられます。かつてその土地にいた動物を戻す「再導入」と、人が管理の手をゆるめて自然の変化を見守る「受動的な再生」です。

再導入で特に重視されるのが、キーストーン種(生態系の要となる生きもの)です。オオカミのような頂点捕食者や、ダムを造るビーバーは、そこにいるだけで周囲の環境を大きく変える力を持っています。

(引用:環境省)

なぜ今リワイルディングが注目されるのか?

リワイルディングが注目される背景には、生物多様性の急速な損失と気候変動という、2つの大きな危機があります。日本の生物多様性国家戦略でも、この「2つの危機」に統合的に対応することが強調されています。

2022年のCOP15では、2030年までに生物多様性の損失を止めて回復へ転じさせる「ネイチャーポジティブ(自然再興)」が世界目標になりました。守るだけでは追いつかない時代だからこそ、「再生する」という発想が求められているのです。

リワイルディングは、気候変動への備えとしても期待されています。湿地や川が本来の姿を取り戻すと水を蓄える力が高まり、洪水や干ばつの影響をやわらげることにつながります。

もちろん、課題もあります。再導入した動物が農作物や家畜に影響を与える懸念や、どの時代の自然を目標にするのかという議論は、今も続いています。それでも、自然と人の関係を結び直す方法として、各地で試行錯誤が重ねられています。

世界と日本の取り組み

オランダでは、干拓事業が失敗して放置された土地「オーストファールテルスプラッセン」が、リワイルディングの象徴的な場所になりました。ヨーロッパの原生種に近いとされるコニック種の馬が放たれ、現在では2000頭を超えるまでに増えています。

イギリスでは、川と周囲の土地のつながりを回復させる取り組みが進んでいます。ナショナル・トラストが管理するホルニコート・エステートでは、湿地の再生やビーバーの再導入が行われ、2026年夏の猛暑と雨不足の中でも、再生した川や湿地では緑が保たれていたといいます。

アメリカでは、イエローストーン国立公園の事例がよく知られています。1995年から1996年にかけてオオカミが再導入されると、シカの仲間であるワピチの行動が変わり、2001年から2020年にかけてヤナギの樹冠の体積が約1500%増えたことが研究で示されました。ただし、オオカミが生態系をよみがえらせたという見方には、科学者の間で異論もあります。

日本でも、政府は30by30目標を掲げ、民間などが守る区域を国が認定する「自然共生サイト」を進めています。2026年3月末時点で、認定数は合計569か所にのぼります。さらに、佐渡島で放鳥が始まったトキは推定500羽を超え、豊岡市のコウノトリも2005年の初放鳥から20年を経て野外の生息数が550羽を超え、13府県で巣立ちが確認されています。

(引用:環境省)

身近な自然を育てる

リワイルディングは、広大な国立公園の話のように感じられるかもしれません。しかし、その考え方は私たちの暮らしの中でも生かせます。

たとえば、庭やベランダで在来の草花を育てたり、草刈りの回数を少し減らしたりすることは、小さな生きものの居場所づくりにつながります。

また、地域の自然共生サイトや里山の保全活動に参加するのも、ひとつの方法です。コウノトリやトキが暮らせる田んぼで育てられたお米を選ぶことも、野生と共生する農業を応援する行動になります。

旅先で自然再生の現場を訪ねるエコツーリズムも、地域の取り組みを支える力になるでしょう。

野生とともに生きる未来へ

リワイルディングは、自然を「管理する対象」から「ともに生きる存在」へととらえ直す試みです。

人が少しだけ手を離したとき、川は蛇行を取り戻し、空には再び大きな鳥が舞い始めます。そこには、私たちが忘れかけていた豊かさがあるのかもしれません。

田んぼの上を飛ぶトキの姿が、いつか日本各地の日常の風景になる日。リワイルディングは、その未来への扉を静かに開いているのかもしれませんね。

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| 2026/10/25
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Webライター

名古屋市在住。 グルメメディアのライター/エディターとして活動するかたわら、環境問題にも取り組むITプロダクト会社に勤務。 持続可能なデジタル社会に興味を持ち、Web3分野を勉強中。

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