【イベントレポート】「BOUSAI ACTION 2026」で見つけた、被災地のためにできる身近なアクション
先日、9月1日の防災の日に合わせて開催された「BOUSAI ACTION 2026」にて、トークセッション『被災地のために、私たちができること。 – 能登・熊本・千葉から考える、身近なACTION -』のモデレーターを務めてきました。
今年は神田消防署が実施する「防災救急フェア」との共同開催ということもあり、会場には約3,000人もの方々が来場し、コンテンツ盛りだくさんの熱気あふれるイベントとなりました。
さて、災害のニュースを見るたび、「現地に行けない自分には何もできない…」と無力感を感じることはありませんか?
今回のセッションでは、「みんなの空」主宰の原順子さんと、「あらいぐま能登」代表の福井圭一さんをゲストにお迎えし、私たちが今すぐできる「身近なアクション」について深く掘り下げてきました。

「すぐに行く善意」が最適とは限らない。問われるボランティアのリテラシー
セッションの前半では、能登や千葉の被害状況を写真で振り返りながら、現場の「今」について伺いました。
発災直後、2024年元旦の能登半島地震では、「『とにかく物資を集めて現地へ!』という個人の善意」が殺到した結果、機能している一本しかない幹線道路が大渋滞し、自衛隊の緊急物資が届かない、救急車が通れないといった事態が起きました。
石川県の馳知事が個人ボランティアを制限する対応を迫られたのは、記憶に新しいところです。
原さんは「受け皿があることを確認してから行動すれば、必ずしも個人の活動を制限する必要はない」と指摘します。
福井さんも、「馳知事の発言が『ボランティア来るな』と批判的に捉えられがちですが、大切なのは先入観を排除してよく考えること。自分が何をしたいかよりも、状況を鑑みた上で何が必要なのかを分析していただきたい」と語っていました。
ボランティア側にも、ただ情熱だけで動くのではなく、状況を冷静に俯瞰するリテラシーが求められているのですね。
技術はいらない。「傾聴」という心の支援
発災から時間が経つにつれて、プロの技術が必要なフェーズから、心と生活への「寄り添う支援」へとニーズが変わっていきます。
ここで私は、「被災していない身で被災された方の『支援』をする際、お二人は何を意識されていますか?」と質問を投げかけました。
これに対し、原さんは「自分の気持ちを持ち込まないこと」と前置きした上で、「『傾聴』は特段のスキルを必要としない立派なボランティア」と教えてくれました。 過疎地など人が少ない地域では、ご近所もみんな被災しているため、かえって自分の辛い状況を吐露できないことが多いそうです。そこに、あえて外の人間が入って話を聞くことで、「外の人には今だけだからいいだろう」と思いを打ち明けてくれることがあるのだと言います。
福井さんも、「被災者という扱いをすると、やっぱり皆さんは心が傷ついたり、『自分は(かわいそうな存在として)違うんだ』という意識を植え付けてしまったりする。被災していないからこそできる『潤滑油』としての働きを心がけ、結局は一対一の人間同士の助け合いだと思っている」と語ってくれました。
お二人のこの言葉は、私が以前から抱えていたボランティアとしての葛藤を乗り越えてくれるものでした。
実は私自身、発災から1年以上経って能登に足を運んだ際、「被災していない身で同情してくれるな」と思われないかと、ずっとモヤモヤしていました。
しかし、「傾聴するだけでも大事な支援になる」「被災者扱いせず一対一の人間として接する」という考え方は、支援をためらうボランティアの背中を力強く押してくれます。
熊本地震などのように、災害そのものよりもその後の避難生活等による「災害関連死」が多くなってしまうケースもあります。
孤独感や喪失感に寄り添う、技術を要さない心のケアは、命を繋ぐ非常に意義深いボランティアのあり方なのです。

会場のスクリーンには、海辺に灯されたキャンドルの写真が映し出されました。
これはキャンドル・ジュンさんが率いるチーム「LOVE FOR NIPPON」が、月命日に行っているキャンドルナイトの様子だそうです。
「毎月の月命日にキャンドルを灯したり、アーティストを呼んでライブをしたり、ジュンさん手作りの料理を振る舞ったりしています。いつまでも悲しんでいられないし、亡くなった方も安心して成仏できるのではないでしょうか。メディアの力を借りて被災地の『今』を伝え、多くの方に『関係人口』になってもらうことがすごく大事です」(原さん)
東京からも、被災地を想う。「写真洗浄」と「なまはげ」から学ぶ防災
「関係人口」というキーワードが出たところで、話題は「現地に行かなくても遠方からできる支援」へ。
その代表例が、福井さんが行っている「写真洗浄」です。

泥だらけになった写真を被災地の外へ運び、きれいに洗浄する。力仕事ではないため、東京にいながら子どもからお年寄りまで家族全員で参加できると言います。
実は私もこの日、ブースで写真洗浄を体験しました。
これは単なる泥や汚れを落とす作業ではありません。見知らぬ誰かの写真であっても、そこに写る家族旅行や子どもの成長記録といった人生の歩みを覗き、想いを馳せる。それだけで遠く離れた被災地が一気に「自分ごと」になり、まさに関係人口になれる体験でした。福井さんも「参加者の方々の『共感』によって支えられている活動です」と話します。
お二人の話を通じて、私は東京大学の加藤孝明教授(地震・地域安全システム研究)から伺った「なまはげは実は究極の防災になっている」という話を思い出しました。
「悪い子はいねがー!」と家を回るなまはげ役の地域の人たちは、事前に親御さんから「うちはおばあちゃんが腰が悪い」「兄弟が何人いる」といった情報をヒアリングしています。だから、いざ発災したときに、「あの家はおばあちゃん逃げ遅れていないかな」と気遣うことができるのです。
写真洗浄を通じて見知らぬ誰かの人生を知り、想いを馳せることも、このなまはげの防災と重なるものを感じました。
災害の大きさを決めるのは「ソーシャル・キャピタル」
原さんは、「これからはお隣同士をあまり知らない『都市型の被災』の方が大きな課題になる。日頃からコミュニティと関わり、他人事じゃなく自分ごとにしてほしい」と警鐘を鳴らします。
私自身、大学の社会学の授業で学んだことがあります。
地震や豪雨そのものは「ハザード(危険要因)」に過ぎず、それが社会に影響を与え、コミュニティが耐えきれなくなったときに初めて「災害」になるのだと。
つまり、地域の繋がりや信頼関係、いわゆる「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」が薄いコミュニティほど、災害の影響を受けやすく、立ち直るための「レジリエンス(回復力)」が低いのです。だからこそ、日頃の強固なつながりこそが最大の防災に繋がります。
「観光」も立派な支援
遠くからできることは他にもあります。
実は私、先日プライベートで宮崎県に行ってきましたが、今回の熊本地震を受け、10月からは九州地方を対象とした「九州ふっこう応援割」が観光庁から発表されています。現地を訪れて美味しいものを食べ、観光し、お土産を買うことも立派な支援です。 原さんも「能登も熊本も、ビジネスが止まって困っている地域がある。お魚もお酒も美味しいから、ぜひ良さを感じに来てほしい」と呼びかけます。

原順子さん(中央)・福井圭一さん(右)
おわりに
「特別なスキルがない自分が関わっていいのか」と躊躇する必要はありません。
原さんが教えてくれた「被災地に赤ちゃんを連れてくるお母さんがいて、その赤ちゃんがいるだけで被災地全体が笑顔になり、癒やしになる」というエピソードのように、寄付や肉体労働以外にも、どんな人にも必ず役割があるのです。
「行かない配慮」が必要な時もあれば、遠く東京から「関係人口」として関わり続けることもできる。そして準備ができたら、どんな自分でも躊躇せずに飛び込んでいい。
今回のセッションを通じて、自分にできる小さなアクションを見つけて行動することの尊さを再認識させられました。
皆さんもぜひ、ご自身の足元からできるアクションを始めてみませんか?
【イベント開催概要】
イベント名:BOUSAI ACTION 2026(神田消防署「防災救急フェア」共催)
日時:2026年9月5日(土)
会場:WATERRAS(ワテラス)@神田淡路町
主催:BOUSAI ACTION 2026 実行委員会
来場者数:約3,000人
▼「BOUSAI ACTION 2026」公式プレスリリース・詳細情報はこちら
MIYAKAWA RYO
宮川 亮
Fridays For Future Yokohama 設立者 / 東京都環境局「DO!NUTS TOKYO」第5期アンバサダー
2004年生まれ、早稲田大学4年生。16歳で環境保護の学生ムーブメント「Fridays For Future Yokohama」を設立。市議やNGOとの意見交換をはじめ、企業への講演や環境系イベントの主催・運営を行う。大学では、子どもの野外環境教育に携わるほか、アジア学生交流環境フォーラム参加、福島原発の視察、能登支援に携わる。活動を通して抱いた問題意識から、ストレスフリーに環境に配慮した行動変容を促すアイデアの社会実装に取り組む。大学の研究助成(24・25年度)、社会起業家支援プログラムに採択されたのち、上場企業に企画提案。 ボーダレス・ジャパン「JOGGO」公式アンバサダー(25年度)。東京都環境局「DO!NUTS TOKYO」第5期アンバサダー。