エシカルバンキングとは?
「エシカルバンキング(Ethical Banking)」とは、利益の最大化だけを目的とせず、環境保全や社会的課題の解決に貢献する事業へ積極的に資金を提供する金融のあり方です。
銀行や金融機関は、預金や投資を通じて集めたお金を企業や事業に貸し出します。その資金の行き先が、社会の姿を大きく左右していることは、意外と意識されていません。
従来の金融では、短期的な収益性が最優先されることが多く、環境破壊や人権侵害のリスクがある事業にも資金が流れてきました。エシカルバンキングは、こうした流れに疑問を投げかけ、「お金を何のために使うのか」という価値観を問い直します。
具体的には、再生可能エネルギー、環境配慮型農業、地域経済を支える中小企業、社会的弱者を支援する事業などへの融資を重視します。一方で、過度な環境負荷を与える事業や、人権問題が指摘される分野への投融資を避ける姿勢を明確にします。
エシカルバンキングは、「金融は中立ではない」という前提に立ち、社会に望ましい変化を促すための道具としてお金を位置づける考え方なのです。
(引用:七十七銀行)
なぜエシカルバンキングが注目されるのか?
エシカルバンキングが注目される背景には、気候変動や格差拡大といった地球規模の課題があります。
温室効果ガスの大量排出や自然破壊の多くは、資金の供給によって支えられてきました。つまり、問題の根本には「お金の流れ」があります。
近年、気候変動対策の遅れに対する危機感が高まり、金融機関の責任が問われるようになりました。世界では、化石燃料産業への投融資を見直す「ダイベストメント(投資撤退)」の動きが広がっています。エシカルバンキングは、その流れを先取りする形で発展してきました。
また、金融危機を経験したことで、「利益追求だけの金融は持続しない」という認識も広がりました。地域経済を無視した融資や投機的な資金運用は、社会の不安定化を招きます。
エシカルバンキングは、長期的な視点で社会全体の健全性を重視し、安定した経済循環を目指します。
さらに、消費者や預金者の意識変化も大きな要因です。自分のお金がどこで使われているのかを知りたい、社会に役立つ形で循環させたいという声が強まっています。
エシカルバンキングは、こうした市民の思いに応える金融の選択肢として支持を集めています。
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(フリー素材)
世界と日本におけるエシカルバンキング
エシカルバンキングは、ヨーロッパを中心に広がってきました。
ドイツの「GLS銀行」やオランダの「トリオドス銀行」は、その代表例です。これらの銀行は、融資先を公開し、再生可能エネルギーや教育、文化事業など、社会的意義の高い分野に特化した金融を行っています。
預金者は、自分のお金がどの分野で使われているのかを確認でき、透明性の高さが信頼につながっています。
イギリスやフランスでも、協同組合型の銀行や地域密着型金融機関が、エシカルな基準を設けた融資を進めています。これらの国では、エシカルバンキングが「特別なもの」ではなく、金融の一つの選択肢として認知されています。
一方、日本では、エシカルバンキングという言葉自体はまだ広く知られていません。しかし、その考え方に近い動きは存在します。信用金庫や信用組合による地域密着型金融、再生可能エネルギー事業への融資、社会課題解決型ファンドなどがその例です。
近年は、メガバンクや証券会社もESG投融資を拡大し、環境・社会への配慮を経営方針に組み込むようになってきました。これはエシカルバンキングの思想が、主流の金融にも影響を与え始めている証と言えるでしょう。
今後、日本でも「お金の使い道」を重視する金融サービスが増えていく可能性があります。
私たちにできること。お金の預け先を考える
エシカルバンキングは、金融機関だけの取り組みではありません。私たち一人ひとりの選択が、その成長を支えています。
まずできることは、自分のお金がどこに預けられ、どのように使われているのかに関心を持つことです。預金口座や投資商品を選ぶ際に、金融機関の方針や投融資先を確認するだけでも、大きな一歩になります。
また、環境配慮型ファンドや社会課題解決型の投資商品を選ぶことも、エシカルバンキングの考え方を実践する方法です。少額から始められる選択肢も増えており、専門知識がなくても参加しやすくなっています。
さらに、金融機関に対して意見を伝えることも重要です。預金者や投資家の声は、金融機関の方針に影響を与えます。
「どんな社会を支える金融を望むのか」を示すことが、お金の流れを変える力になります。
お金は社会への投票
エシカルバンキングは、「お金は中立ではない」という事実を私たちに突きつけます。
お金をどこに預け、どこに回すか。その選択は、未来の社会に対する一票でもあります。
利益を生むことと、社会を良くすることは対立するものではありません。むしろ、環境や人を大切にする金融こそが、長期的に安定した経済を支えます。
私たちは日々、買い物だけでなく、金融の選択を通じても社会に関わっています。
お金の流れに目を向けること。それが、持続可能な社会への静かで確かなアクションになるはずです。
KENNY
Kenny
Webライター
名古屋市在住。 グルメメディアのライター/エディターとして活動するかたわら、環境問題にも取り組むITプロダクト会社に勤務。 持続可能なデジタル社会に興味を持ち、Web3分野を勉強中。
