カトリンと始めるエシカルライフvol.1|今、知らなくてはならない環境のこと
私たちの暮らす地球は、常にさまざまな問題に直面しています。そのうちの1つが、環境問題です。
お話を聞かせてくれるのは、環境保護活動家でNPO法人HAPPY PLANETの代表を務める宮澤カトリンさん。
この企画では、国内外で活動を行ってきたカトリンさんに環境問題による影響や世界の取り組みについて教えてもらいながら、今、私たちにできることを探っていきます。
ドイツ・ベルリン出身。日本の伝統文化に興味を持ち上智大学に留学。今年で日本在住8年目。
大学在学中に訪れたフィリピンで、台風による甚大な被害を目の当たりにしたのをきっかけに気候変動に興味を持つ。
2022年、環境活動を行うNPO法人HAPPY PLANETを設立。
現在は名古屋を中心に、環境問題に関する講演やボランティアに取り組む。
活動のモットーは「楽しみながら、問題に対する解決策を見つける」。
環境問題って、そもそもなんだろう?
——はじめに、環境問題にはどのようなものがあるのか教えてください。
皆さんがよく耳にする環境問題には、気候変動や海洋汚染、大気汚染、森林破壊など、さまざまな種類があります。
そのどれもが、私たち人間の生活や行動が原因で引き起こされています。
環境問題のなかでも、今、緊急の対策が必要とされているが気候変動と生物多様性の減少の2つです。
①気候変動(地球温暖化)
(フリー素材使用)
排出された温室効果ガスが地球を覆うことで、太陽の熱が閉じ込められます。これが地球温暖化や気候変動を引き起こします。現在、地球温暖化は観測史上最も急速に進行しています。
(引用:国連)
かつて地球温暖化と言われていた問題で、最近では気候危機とも呼ばれています。
毎年のように襲い来る豪雨や夏の猛暑など、日本で暮らす私たちにとっても非常に身近な問題ですよね。
豪雨や猛暑による関連災害も相次いでいます。2021年に熱海市で発生した大規模な土石流は、皆さん記憶に新しいと思います。
日本だけでなく、地球温暖化によって雨が多い地域ではさらに威力が増したり、反対に乾燥している地域では干ばつに近い状態になってしまったりと、世界中で影響が現れています。
これまでと比べて天候がとても激しくなっている、という表現が一番分かりやすいかもしれません。
——豪雨や猛暑、干ばつ、海氷面積の減少などの問題は、年々深刻化しているように思います。
(フリー素材使用)
今、地球の平均温度は産業革命の頃と比べて1.1度くらい上昇しています。
この1.1度の上昇は夏の気温が28度から29度になる、ということではありません。簡単に言うと、地球の体温がプラス1.1度になるということです。
もし人間の平均体温が36.5度から37.6度に上昇したら、微熱があるということになり、体調不良を疑いますよね?地球は今まさにその状態になっているんです。
このまま地球の温度がさらに上昇していくと、豪雨や猛暑が発生するリスクはさらに高まり、より大きな被害を引き起こしかねません。
地球温暖化でミツバチが減少、人間も絶滅の危機?
②生物多様性の減少
人間活動による影響が主な要因で、地球上の種の絶滅のスピードは自然状態の約100~1,000倍にも達し、たくさんの生きものたちが危機に瀕しています。
(引用:環境省)
生物の多様性は、気候変動や環境汚染、森林伐採などが原因で失われつつあります。現時点で100万種類の生物が絶滅の危機に面していると言われています。
人間も地球上の生態系の1つです。多様性の損失によって食物連鎖のバランスが崩れると、今までいなかった地域に外来種が入ってくるなど、私たちの生活にも大きな影響を及ぼします。
最近よく耳にするのは、ミツバチの急激な減少です。
地球温暖化や環境汚染による病気の蔓延や、外来種の侵入によって、近年、世界中でミツバチが大幅に数を減らしているそうです。
——ミツバチの減少が、私たちの生活とどうつながっているのですか?
(フリー素材使用)
ミツバチなどの昆虫は、植物や農作物が受粉するために花粉を運ぶ役割を担っています。
そのため、ミツバチが減少するとハチミツはもちろん、食料や農作物が上手く育たなくなり、最悪の場合、食料危機に陥る可能性もあります。
「ミツバチがいなくなると人間も数年で絶滅する」と言っている研究者もいるんですよ。
気候変動も生物多様性の減少も、各国が危機感を持って対策に取り組まなければならない状況にあるのです。
世界各国が温室効果ガスの削減目標を設定
今後、地球の平均気温は2100年までにおよそ4度上昇すると言われています。
1.1度の上昇でもこれほどの影響が出ているのに、4度も上がってしまったらどうなるんだろう?と不安に思いますよね。
二酸化炭素排出の大部分は、電気を生み出すために石炭や石油、ガスなどの化石燃料を使うことが原因です。世界中の科学者たちは、できるだけ早く太陽光や風力といった再生可能エネルギーに切り替える必要があると主張しています。
(引用:環境省HP)
危機的状況から脱するために、2015年には「産業革命前からの世界の平均気温上昇を2度未満に抑え、1.5度未満抑える努力をする」などの内容を盛り込んだパリ条約が採択され、196か国がこれに合意。
現在、それぞれの国が温室効果ガスの削減目標を掲げ、実現へ向けて力を尽くしています。
しかし、G20の国々の削減目標は残念ながらまだ十分ではありません。
現状を変えるためにも、国や企業はもちろん、1人ひとりが問題意識を持って気候変動や生物多様性の減少などの課題と向き合うことが必要です。
(活動のようす:カトリンさん提供)
私たち市民が声をあげて、より強力な対策を求めていく。私はそのために活動を続けています。
日本で暮らしていると、ニュースをはじめとしたメディアでも、もっと深く環境問題について報道する必要があると感じます。
ドイツのニュースでは、例えば異常気象が起きた時、合わせてその背景にある気候変動についても長ーく報じるんですよ。それが国民への問題提起にもなっているんです。
ポイントは「無理をしないこと」。自分の意志を示すことも大切!
——自分に何ができるのか気にはなるものの、なかなか実践に移せません…。
大切なのは、どんな小さなことでもそれを継続すること。無理はせずに、できることから始めてみましょう。
よく言われているのは、こまめに電気を消すなどの節電やゴミの分別。これらが生活のなかで当たり前になっていくと良いですね!
(名古屋でのボランティアの様子:カトリンさん提供)
私が、環境のための取り組みと同じくらい重要だと感じているのは、1人ひとりがしっかりと意思表示をすることです。
SNSを通じて情報や考えを発信したり、ボランティアに参加したり、あとは環境問題に配慮した商品を購入したりと方法はいろいろあります。
選挙もその1つ。環境問題への対策を政策に掲げている政治家を調べて投票することも、立派な意思表示になります。
1人が意思を示すことで、その周りの人たちが環境問題に目を向けるきっかけとなり、その輪がどんどん広がっていくのが理想です。
(講師として情報発信を行っているカトリンさん:カトリンさん提供)
皆さんのなかには、日々の生活のなかでもっとできることはないか、探している方もいるかもしれません。
実は節電やゴミの分別のほかにも、さらに手軽に、そして効率的にゴミや二酸化炭素を減らす方法があるんですよ!
最も効果的なものとして、家庭でも再生可能エネルギーへの切り替えるという選択肢があります。
詳しくは次回、私も実践しているサステナブルな取り組みと合わせてお伝えしますね。
NAKAYAMA SAORI
saori
フリーライター
東京都在住。インタビュー記事をメインに活動するライター。前職はテレビ局の記者で、趣味はサッカー観戦(Jリーグ・プレミアリーグ)。最近、美味しいヴィーガンクッキーに出会ったことをきっかけに、ヴィーガン食やサステナブルな商品に興味を持ち始めました!