カトリンと始めるエシカルライフvol.5|「SDGsブーム」が環境問題に対する意識を変えるヒントに
私たちの暮らす地球は、常にさまざまな問題に直面しています。
そのうちのひとつが環境問題です。
これまで、環境保護活動家でNPO法人HAPPY PLANETの代表を務める宮澤カトリンさんに、環境問題の今や懸念される未来への影響などについて教えてもらいながら、私たちにできることを探ってきました。
最後となる今回は、日本ならではの環境問題に対する向き合い方や今後期待される変化など、お話を伺いました。

ドイツ・ベルリン出身。日本の伝統文化に興味を持ち上智大学に留学。今年で日本在住10年目。
大学在学中に訪れたフィリピンで、台風による甚大な被害を目の当たりにしたのをきっかけに気候変動に興味を持つ。
2022年、環境活動を行うNPO法人HAPPY PLANETを設立。
現在は名古屋を中心に、環境問題に関する講演やボランティアに取り組む。
活動のモットーは「楽しみながら、問題に対する解決策を見つける」。
環境問題に対して意識の高いドイツ、日本ではSDGsの浸透が急速に進む。
——カトリンさんが生まれ育ったドイツは、環境問題に対する意識がとても高い国として知られています。
ドイツでは、16歳から18歳までの若い世代で地球温暖化を心配している人の割合は48%、さらに年齢の低い12歳から13歳でも46%という調査結果が出ています。多くの人が、子どもの時から環境問題について高い関心を持っているんです。
年齢に関係なく近年の気候変動の深刻さを理解して、自分の将来にどのように関わって来るのかをしっかりと考えている人が多いのだと思います。
そうした意識が育つ背景には、日頃から環境問題を目にしたり耳にしたりする機会が多いというのがあります。特に身近なものがテレビです。
ドイツでは、ニュースをはじめテレビのさまざまな番組で頻繁に環境問題を取り上げています。

(フリー素材使用)
何気なくテレビを付けた時に、「あっ、また気候変動の番組やってる」「今日も地球温暖化の話をしてる」といった感じなんです。
日本では、夏になると豪雨や猛暑などと関連して環境問題を取り上げる番組が増える印象ですが、ドイツでは季節に関係なく1年を通して環境問題を話題にしています。
ドイツで一番見られている毎日8時のニュースでも、「地球温暖化」というワードが出てこない日はほとんどないくらいなんですよ。
——日本でも、もっと環境問題について知り、自分事として考える機会を増やしていきたいですね。
はい。そういった点で期待しているのが、日本における「SDGs」の認知度の高さです。
SDGsとは「Sustainable Development Goals」を略したもので、国連サミットによって掲げられた、2030年までに達成すべき17個の「持続可能な開発目標」を指します。
この17個の項目には、紛争や貧困、気候変動などの問題が含まれており、私たちがこの地球で暮らしていくためにこれらの課題を解決していこうと作られました。
恐らく、誰でも一度はカラフルな項目が並んだSDGsの表を目にしたことがあると思います。

(引用:ユニセフ)
SDGsは国連加盟の193か国すべてが取り組んでいますが、現時点ですべての目標を達成した国はありません。
1位のフィンランドでさえ、完全に達成しているのは2つだけです。日本の達成率は現在19位で、「目標3:すべての人に健康と福祉を」だけが達成されているという状況です。(出典:https://dashboards.sdgindex.org/rankings)
2030年まで残り5年。その期限はすでに目の前に迫っていますが、ほとんどの国がまだ長い道のりの途中にいるんです。
変わっていく子どもたち。私たち大人や企業はどうあるべき?
——このSDGsが、どうして日本においては重要なのでしょうか?
国によって、SDGsへの理解や広まり方はかなり違うように感じます。実は、この17個の内容について海外ではあまりよく知られていないんです。
環境問題に対する意識の高いドイツでもSDGsについて知っている人はまだ少なく、企業の関係者や政治家など一部の人しか意識していないのが現状です。
その一方で、日本ではSDGsがとても注目されていて、他の国と比べると「ブーム」と言えるくらい広まっていると感じています。カフェやレストラン、公共交通機関など、あらゆる場所でSDGsに関するPRや啓発ポスターを見かけますよね。
実際にGoogleトレンドの検索ランキングでも、日本は2位以下の国と大きな差をつけて1位になっていて、関心の高さがよく分かります。(出典 :Frontier Eyes Online)
日本の教育現場でも、SDGsはしっかり取り入れられています。
小学校から大学まで学校によっては一つ一つの目標について詳しく学べるようカリキュラムが組まれていて、子どもでも分かりやすい教材がたくさんあります。
そのおかげで、社会問題や環境問題に関心を持つ若い世代が増えてきました。
私の活動に参加する若者の中にも、「学校でSDGsを学んで興味を持った」という人がたくさんいるんですよ!

(子どもたちを前に講演するカトリンさん)
また最近では、就職活動をする学生が就職する企業を選ぶ際に「この企業は本気でSDGsに取り組んでいるか」を重視するようになってきています。そのため企業側もただのアピールではなく、実際の行動やその質が求められるようになってきました。
——若い世代が中心となって、少しづつ環境問題に対する危機感を強めているんですね。
次世代を担う子どもたちが環境問題に対してしっかりと当事者意識を持つというのは、本当に素晴らしいことだと思います。
しかし、SDGsのブームには良い面もあれば少し心配な面もあります。
まず心配な点としては、企業がSDGsをグリーンウォッシュ(見せかけの環境配慮)に使ってしまうことです。
たとえ本業があまり環境に優しくなくても、小さな取り組みを「SDGsに貢献しています」と大きくPRして、企業全体のイメージをよく見せようとするケースがあります。
企業の皆さんには、SDGsは本来自分に都合のいい目標だけを選ぶものではなく、17すべての目標を少しずつ着実に進めていくことで、初めて大きな意味を持つということを忘れないで欲しいですね。

(カトリンさんの活動にも多くの若い世代が参加)
もう一つは、日本人特有の「皆がやるなら自分もやる」という考え方です。
日本には、昔から個人の意見よりも集団としての意見を尊重する文化がありますよね。
そうした協調性を大切にする国民性が私はとても好きなのですが、「皆がやらないのならば、自分もやらなくてもいい」という考え方が生まれてしまい、環境問題に対する意識の低さや投票率の低下につながっているのかもしれません。
その国民性を逆手に取り、今よりたくさんの人が環境問題をもっと深刻に捉えて声を上げることができれば、人々の考え方や問題意識も180度変わっていくのではないでしょうか。
——最後に、記事を読んでくださった皆さんや今後の日本に、どのような変化を期待していますか?

これからは、2019年に世界中で広がったFridays for Futureのように、SDGsをきっかけに行動を起こす若者がもっと増えてほしいと願っています。
Fridays For Future(未来のための金曜日)は、2018年8月に当時15歳のグレタ・トゥーンベリが、気候変動に対する行動の欠如に抗議するために、一人でスウェーデンの国会前に座り込みをしたことをきっかけに始まった運動です。
彼女のアクションは、多くの若者の共感を呼び、すぐさま世界的な広がりを見せました。この世界的なムーブメントに共感する若者は、ここ日本にもたくさんいました。2019年2月、日本でのFridaysForFutureの運動が東京から始まります。発足以来、若者を中心に、徐々に全国各地に活動が広がっています。
ただ、日本は高齢化が進んでいて、若者の数が少ないため声を上げにくい状況にもあります。
よく「若者、頑張ってください」と声をかけていただくのですが、若者だけが頑張っても、大人の世代が変わらなければなかなか社会は変わりません。
だからこそ、若者を見守る大人の皆さんや高齢の方々も若者の意見にもっと耳を傾け、真剣に受け止めていただけないでしょうか。
最後に個人的な願いにはなりますが、子どもたちと向き合い頑張っている全国の先生方には、SDGsを一時的なブームで終わらせず、これからも教育の中でしっかりと伝え続けていただけたら嬉しいです。
そして、市民・企業・政府が一緒になって、約束したSDGsの目標を一歩ずつ、確実に実現して欲しいと思います。
NAKAYAMA SAORI
saori
フリーライター
東京都在住。インタビュー記事をメインに活動するライター。前職はテレビ局の記者で、趣味はサッカー観戦(Jリーグ・プレミアリーグ)。最近、美味しいヴィーガンクッキーに出会ったことをきっかけに、ヴィーガン食やサステナブルな商品に興味を持ち始めました!