みんなのリーダー vol.2|環境活動家 露木しいな
2001年横浜生まれ、中華街育ち。「世界一エコな学校」と言われるインドネシアの「Green School Bali」で高校3年間を過ごし、卒業。COP24(気候変動枠組条約締約国会議) in Poland、COP25 in Spainに参加。肌が弱かった妹のためにSHIINA organicを立ち上げる。2019年9月、慶應義塾大学に入学。現在は、環境講演を全国の小中高学校に行うため、休学中。180校3万人以上にお話を届けた。
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グリーンスクールで培った環境に対する想い
——露木さんが環境問題に目を向け始めたのはいつからですか?
環境問題に興味を持ち始めたのは、高校生の時にバリにあるグリーンスクールに通ったことがきっかけです。
グリーンスクールは「世界で一番エコな学校」と言われていて、「世界のグリーンリーダーを育てよう」ということを目標に掲げている学校なんです。
グリーンスクール
2008年にインドネシア・バリ島のジャングルの中につくられた自然溢れるインターナショナルスクール。「21世紀を担う子供たちに”地球人”としての責任を全うする力をつけさせること」をミッションに、校舎は環境負荷の少ない材質で建てられた「世界一エコな学校」と呼ばれています。
英会話を学ぶだけでなく、体験型の授業が多く、自ら考え行動する力を養うことができることや、食事に関しても生徒自らが自炊を行います。農場のおがくずを燃料に使用して火を起こしたり、お皿は堆肥化が可能なバナナの葉を利用するなど、環境に優しい学校として世界中から注目を集めています。
https://www.greenschool.org/bali/green-school-english/japanese/
なので日本で言う普通の授業というよりは、環境問題に絡んだ内容がとても多くて、自然と環境問題に対して触れることが多かったことが一番影響が強かったと思います。
(提供:露木しいなさん 「グリーンスクール写真」)
——自然豊かで気持ちよさそうな学校ですね!露木さんはなぜグリーンスクールを選んだのですか?
元々は語学留学先を探していたのですが、母から「せっかく留学するなら、英語以外にも+αで新しいことを学べるところに行った方がいいよ。」とアドバイスされ、そこから世界中にある面白い学校を探していた時に、たまたまインターネットでグリーンスクールを見つけたことがきっかけでした。
——まさに運命の巡り合わせだったんですね。グリーンスクールではどういったことをされていたのですか?
グリーンスクールは日本の大学に似たところがあって、決まった教科の単位を取ると卒業できるようになっていて、ただ授業自体は普通の高校とは違い体験型の授業がすごく多かったんです。学校の外に出て課外学習をしたり、五感を使って学ぶことだったり。
例えば海洋プラスチック問題を学ぶってなった時に、どれだけ海にゴミが捨てられているかという情報を学ぶだけではなく、実際に海に行ってどんなゴミがあるのかを確認して、実際にこの問題を解決するためにはどういったことが必要なのかをみんなで考えて、じゃあやってみよう!というところまで実践する学校でした。
(提供:露木しいなさん 「クラスメート写真」)
環境活動家の一歩として始めた環境講演
——講演や現在の活動の根幹にあるのは、グリーンスクールでの体験が大きいのですね。
今のように環境活動家として講演を始めたのは、グリーンスクールを卒業して、日本に戻ってきて大学に入学した後。
環境に対して何かアクションを起こしたいと思った時に、環境問題についてたくさんの人に知ってもらいたいと思い、講演という手段を選びました。
講演をしたいと考えていたのは当時19歳の頃で、今しかできないこと、自分にしかできないことってなんだろうと考えた時に、やはり同世代の人たちに向けて講演をしたいと思ったんです。なので学校というジャンルに絞って講演活動をしようと。
でも学校の授業中に講演をするとなると、私は大学に通うことができない。なので大学を休学して、約3年間講演活動に専念しました。
大学は待ってくれるけれど環境問題は待ってくれないし、大人になるのを待たなくてもやれることはあるんじゃないかなと。
——すごい行動力…。今までにどれだけの人たちに講演を行ったのですか?
学校だけで220校ほど講演させていただきました。3年間講演活動をして、2024年3月からはまたコスメの研究と製作に力を入れていきたいと考えています。
(提供:露木しいなさん/国連広報センター 「環境講演活動」)
人と環境に優しい「SHIINA organic」
——露木さんはなぜオーガニックコスメ「SHIINA organic」を立ち上げたのですか?
一番最初は肌が敏感な妹の肌荒れをきっかけに、人に優しいものを作れたらいいなという思いから作り始めたんですね。グリーンスクール在学中から研究していました。
(提供:露木しいなさん 「口紅作りをしている様子」)
SHIINA organic
露木しいなさんが自身の妹の肌荒れをきっかけに、自然環境、生産工程、使い終わった後の容器の処理など、製造に関わるすべての過程で人や動物、地球に配慮し、天然由来にこだわったコスメブランド。
国際基準コスモスオーガニック認証を日本で初めて取得したリップを製造、販売。
人に優しい化粧品ってどうやったら作れるんだろうと研究している中で、世界中で作られている化粧品が環境破壊につながっていることを知ったんです。
例えば、化粧品には多くのプラスチックが使われていたり、世界中で販売されている約6割の化粧品にはパームオイル(ヤシ油)が使用されているのですが、このパームオイルを生産する過程で多くの熱帯雨林が伐採されていたり。
グリーンスクールでも様々な環境問題についても学んでいたので、どうせものづくりをするなら、単に人に優しいだけでなく、環境にも優しいもの、社会問題を解決できる化粧品を作りたい!という気持ちで現在も研究と製作を続けています。
(提供:露木しいなさん 「SHIINA organicの人に優しく環境に配慮したリップ」)
環境活動家が必要ない社会を目指して
——「環境活動家が必要ない社会」を掲げていますが、具体的にどのような社会になればいいと考えますか?
みんなが当たり前に環境問題に取り組める社会を「環境活動家がいない社会」だと考えていて、逆に言えば「みんなが環境活動家」のような社会。
物事って当たり前のようになってくると、その言葉って必要なくなったりするじゃないですか。「環境活動家」という言葉があるのは、環境活動を行う人たちが当たり前じゃないから存在しているんだと思うんですね。
例えば、日本に住んでいる人がわざわざ「私は日本人です。」て言うことってないじゃないですよね。環境問題やSDGs、環境活動家という言葉が社会でたくさん使われているのは、それがまだ当たり前じゃないということだと思います。
(お話いただいている露木しいなさん)
小さなアクションでも、みんなでやれば大きなインパクトに
——みんなが環境活動家になるためにはどういったアクションが必要でしょう?
日常のアクションってすぐに効果が見えるものではなくて、そうすると継続することが難しかったりするんですよね。一番手っ取り早いことは家庭の電気を再エネ(再生可能エネルギー)に変えることだと思うんです。
家庭から出る排出量の約半分は電気から来ているので、そこを見直すことができたら数字として目に見えて改善していることになると思うんです。特に意識しなくても継続できるものなのでいいんじゃないかなと。
あとは「自分たちが(環境に対して)アクションしていることに意味がある。」という気持ちが大事です。
社会問題ってみんなが少しずつ加担しているんですが、少しだからこそ加担しているという認識がないので、逆に言うと自分たちの環境アクションが社会問題の改善を担っているという認識も少ないんです。
1人ひとり、1つひとつが小さなアクションかもしれないけれど、やる人が増えればそれは大きなアクションになります。
——あとは1人ひとりが環境に対して目を向けて、知識をつけることも必要ですよね。
自分の周りの環境を変えることが大事で、環境問題に対して発信している人のSNSをフォローしたりするだけで自然に情報が入ってくると思います。
あとは環境問題に取り組んでいる人たちと関わりを持つことで、仲間も情報も増えて、意識もより強くなっていくと思います。
環境団体が開催している無料のイベントも、調べたらたくさんあるので、そういったものに参加するのもおすすめです。
KENNY
Kenny
Webライター
名古屋市在住。 グルメメディアのライター/エディターとして活動するかたわら、環境問題にも取り組むITプロダクト会社に勤務。 持続可能なデジタル社会に興味を持ち、Web3分野を勉強中。