リジェネラティブ農業とは？

「リジェネラティブ農業（Regenerative Agriculture）」とは、単に環境へのダメージを抑えるだけでなく、自然環境を回復・再生させることを目的とした農業のことです。
「リジェネラティブ」とは「再生する・回復させる」という意味で、従来の農業とは一線を画したアプローチです。

この農法では、以下のような手法が取り入れられます。

• 土壌の有機物を増やすことで土の保水性や栄養保持力を高める

• 輪作や混作により病害虫のリスクを減らし、多様性を確保

• 化学肥料・農薬の使用を抑えることで、環境負荷を減らす

• 家畜との共生によって、肥料循環や草地管理を実現

• 耕さない農法（不耕起栽培）で土壌生態系を守る

これらの実践により、土壌の炭素固定能力が高まり、地球温暖化の緩和にも貢献できるとされています。

（引用：国際農研）

なぜ今リジェネラティブ農業が必要とされるのか？

現代の農業は、食料生産の効率化に成功した一方で、土壌の劣化、水質汚染、生物多様性の減少といった環境問題も引き起こしてきました。特に、モノカルチャー（単一作物の連作）や大量の化学肥料・農薬使用は、土の生命力を著しく低下させていると指摘されています。

また、農業自体が地球温暖化の原因の一部になっているという事実も見逃せません。国連の報告では、世界の温室効果ガス排出量の約20〜25%が農業・土地利用・森林破壊に由来するとされています。

こうした状況の中で、農業を「環境破壊から回復の手段へ」と転換するための考え方として、リジェネラティブ農業が注目されているのです。単なる「持続可能性」ではなく、自然環境をより良い状態へと“再生”していくことを目指している点が大きな特徴です。

世界と日本における実践事例

リジェネラティブ農業は、世界中で実際に導入が始まっています。

海外の事例

アメリカのパタゴニア社は、自社製品に使うコットンの栽培地でリジェネラティブ農法を推進し、認証制度も設けています。

（引用：Patagonia）

オーストラリアの酪農家では、放牧のタイミングと草地再生のサイクルを意識的に管理し、牧草地の炭素吸収能力を高めています。

インドの小規模農家では、堆肥や緑肥を使った無農薬のリジェネラティブ農業が、低コストで持続可能な農業モデルとして広がっています。

日本の事例

日本でも、徐々にリジェネラティブ農業への取り組みが広がりつつあります。

長野県では、有機農業をベースに草生栽培・不耕起・家畜ふん堆肥の循環を実践する農家が増えています。

一部の自治体では、リジェネラティブ農法を地域ブランドに取り入れ、観光や教育と連動させた地域活性化も進められています。

若手農業者の間では、「農業×環境再生」をビジネスチャンスと捉える動きも生まれており、新しい農業モデルの可能性が注目されています。

私たちにできること—食べることで環境を再生する選択を

リジェネラティブ農業は、農家や企業だけの取り組みにとどまりません。私たち消費者の選択も、この動きを後押しする大きな力となります。

再生型農業に取り組む生産者の食材を選ぶ

有機や自然栽培の食品に目を向ける

地域密着の農家から直接購入する

パッケージやブランドの姿勢をチェックする（第三者認証の確認など）

また、企業や自治体がリジェネラティブ農業を支援する動きが広がれば、農業の収益性と環境性を両立させるモデルも構築されていくでしょう。

「育てる”から“再生する」農業へ

リジェネラティブ農業は、単なる農法の一種ではありません。それは、「人と自然が共に再生していく社会」への道を示す考え方でもあります。

気候危機、生物多様性の損失、土壌の枯渇──これらの問題に立ち向かうには、農業のあり方を根本から見直す必要があります。
そして私たちは、「何を選んで食べるか」という日々の選択によって、持続可能な未来づくりに参加することができるのです。