持続可能な開発目標(SDGs)の第14項目「海の豊かさを守ろう」は、海洋とその資源を保護し、持続可能に利用することを目的としています。地球の表面の約70%を占める海は、気候の調整、酸素の供給、食料や雇用の提供など、私たちの生活にとって欠かせない存在です。しかし今、私たちの海は深刻な危機にさらされています。
この記事では、海洋環境の現状、主な課題、世界や日本の取り組み、そして私たちにできることを紹介します。
海洋環境の現状
海は、私たちに酸素や水、気候の安定、食料など多くの恵みをもたらしています。実際に、地球上の酸素の半分以上は海から供給されており、海洋生態系は地球規模の生命維持システムの中核をなしています。
一方で、世界では毎年800万トンを超えるプラスチックごみが海に流れ込み、海洋生物の生存を脅かしています。さらに、気候変動の影響で海水温が上昇し、サンゴ礁の白化や魚類の生息域の変化が進行しています。乱獲による漁業資源の枯渇も大きな課題であり、持続可能な利用が求められています。
主な課題
プラスチックごみによる汚染
世界中の海に蓄積されたプラスチックごみは、生態系に深刻なダメージを与えています。レジ袋やペットボトル、ストローなどが海に流れ込み、ウミガメや魚、海鳥が誤って飲み込む事故が多数発生しています。また、プラスチックが微細化したマイクロプラスチックは魚類の体内に取り込まれ、最終的に人間の健康にも影響を及ぼす可能性があります。
(引用:政府広報オンライン)
漁業資源の乱獲
世界の漁業資源の3分の1以上が乱獲または限界に近い状態で利用されていると報告されています。特にマグロやうなぎ、サメなどの大型魚は著しく減少しています。水産資源は無限ではなく、持続可能な方法での漁獲と消費が不可欠です。
サンゴ礁の減少
サンゴ礁は「海のゆりかご」とも呼ばれ、多くの海洋生物にとって大切な生息環境ですが、海水温の上昇により白化現象が進み、死滅するケースが増えています。これは気候変動による影響の一つであり、豊かな海洋生態系の崩壊にもつながりかねません。
海洋酸性化と気候変動
海は地球上の二酸化炭素(CO₂)を吸収していますが、その結果、海水の酸性度が上昇し、貝類や甲殻類など、石灰質の殻を持つ生物に悪影響を及ぼしています。さらに、海水温の上昇は海流や気候にも影響を与え、異常気象を引き起こす一因ともなっています。
各国の取り組み
海洋保護区の設置
多くの国や国際機関は、海洋保護区(MPA)を設け、生態系の保全と資源の回復を目指しています。これにより、人間の活動を制限することで、魚類やサンゴ礁などが再生しやすい環境を整えることができます。国連は2030年までに世界の海洋の30%を保護区域とする目標を掲げています。
フランスやEUのプラスチック規制
フランスやEU諸国では、使い捨てプラスチックの禁止や規制が進められています。ストロー、カトラリー、綿棒などが対象とされ、再利用可能な素材への転換が促されています。こうした政策は企業や市民の意識変化にもつながっています。
日本の海洋対策
日本では「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」や「ブルーカーボン」への注目が高まっています。ブルーカーボンとは、海藻や干潟が吸収・貯蔵するCO₂のことで、海を通じた気候変動対策として注目されています。また、漁業関係者と市民が連携して藻場の保全活動を行う地域も増えています。
私たちにできること
プラスチックの使用を見直す
マイバッグやマイボトルの使用、プラスチック製品を避けた買い物、簡易包装の商品選択など、私たちが日常生活でできることは多くあります。一人ひとりの行動が、海へのごみ流出を大きく減らすことにつながります。
サステナブル・シーフードを選ぶ
持続可能な漁業によって獲られた魚介類には、MSC認証やASC認証などのラベルがついています。こうした製品を選ぶことで、資源を守りながら美味しい海の幸を楽しむことができます。
(引用:WWF ジャパン)
清掃活動や寄付に参加する
地域の海岸や川の清掃活動に参加する、海洋保全団体に寄付するなど、直接的に海を守る行動も効果的です。こうした活動は家族や友人と一緒に楽しみながら行えるのも魅力です。
海について知り、発信する
まずは海の現状を知ること、そしてその情報をSNSや学校、職場などで共有することも立派なアクションです。「海の豊かさを守る」ことは誰かに任せるのではなく、私たち一人ひとりが担うべき責任です。

KENNY
Kenny
Webライター
名古屋市在住。 グルメメディアのライター/エディターとして活動するかたわら、環境問題にも取り組むITプロダクト会社に勤務。 持続可能なデジタル社会に興味を持ち、Web3分野を勉強中。