持続可能な開発目標(SDGs)の第16項目「平和と公正をすべての人に」は、平和で包摂的な社会を実現し、すべての人が差別なく法の下で守られ、公正な制度や安全な暮らしを享受できる世界を目指すものです。
戦争や紛争、差別、暴力、腐敗、権利の侵害は、人々の生活と尊厳を奪い、社会の発展を妨げます。この目標は、そうした不公正や暴力をなくし、誰もが安心して暮らせる社会を築くための道しるべとなります。
現在の世界の状況
紛争と暴力の蔓延
現在もなお、世界各地で武力紛争やテロ、暴力による被害が続いています。子どもが兵士として使われたり、病院や学校が攻撃されたりする事例も後を絶ちません。国連の推計では、2020年代に入って以降、世界人口の4人に1人が武力衝突や暴力に影響されている地域で生活しているとされています。
また、暴力は戦争だけに限らず、家庭内暴力、性的暴行、人種や宗教による差別など、身近なところにも存在しています。女性や子ども、LGBTQ+の人々、少数民族などが被害を受けやすい現実も見逃せません。
法制度の未整備
多くの国では、司法制度が整っておらず、不当な逮捕、拷問、差別的な扱いがまかり通っています。また、貧困層や教育を受けられない人々は、法の保護を十分に受けることができず、権利を主張する手段すら持てません。
さらに、政府の腐敗や不正が問題となっている国も多く、政治や行政の透明性が欠如することで、市民の信頼が損なわれています。
(引用:プラン・インターナショナル)
主な課題
子どもの人権侵害
世界では、教育を受けられない子どもや、児童労働、児童婚、紛争地での徴兵といった形で、子どもの人権が著しく侵害されています。これらの子どもたちは将来にわたって不利益を受けやすく、貧困の連鎖から抜け出すことが困難になります。
腐敗と汚職
政治や行政における腐敗は、公共サービスの不平等や資源の偏在を引き起こし、社会的不平等を拡大させます。腐敗の横行は市民の政治離れや社会不信につながり、民主的な社会の基盤を揺るがします。
ジェンダーとマイノリティへの暴力
女性や性的マイノリティ、障がい者、先住民族など、社会的に弱い立場にある人々は、差別的な制度や暴力の対象となりやすく、平等な権利が保障されていません。社会制度だけでなく、文化や慣習の中にも根深い偏見があります。
(引用:水戸市HP)
正義へのアクセスの格差
貧困層や農村地域に住む人々、教育を受けていない人々は、裁判所にアクセスすることすら難しく、不正を訴える手段が限られています。また、警察や司法機関の不正や暴力行為も問題視されています。
各国と日本の取り組み
国連の「平和構築」支援
国連は平和維持活動(PKO)や選挙支援、人権監視などを通じて、紛争後の国の安定化と法制度の整備を支援しています。紛争によって分断された社会の再統合や、子ども兵の社会復帰支援なども重要な活動の一つです。
ノルウェーの司法アクセス制度
ノルウェーでは、すべての市民が所得に関係なく法的援助を受けられる仕組みが整っています。特にDV(家庭内暴力)被害者や子ども、高齢者など、法的保護が必要な人々に対して、無料で弁護士を紹介する制度が評価されています。
日本の人権教育と法律扶助
日本では、法テラスを通じて低所得者でも法的相談を受けられる体制が整備されつつあります。また、小中学校や高校での人権教育の強化、ジェンダー平等に関する啓発活動なども進められています。ただし、家庭内暴力やヘイトスピーチ、外国人への差別など、課題は今なお多く残されています。
私たちにできること
人権や平和について学ぶ
まずは「知ること」から始めましょう。戦争や差別の歴史、現在の人権問題について正しい知識を得ることで、偏見や誤解をなくす第一歩になります。図書館の本、ドキュメンタリー、信頼できる情報源を活用しましょう。
暴力や差別を見過ごさない
身の回りで起きている暴力、いじめ、ハラスメント、差別的な言動に対して、「それはおかしい」と声をあげることが大切です。傍観せず、小さな違和感に気づくことが、平和で公正な社会への第一歩です。
公正な政治に関心を持つ
選挙で投票する、地域の議会を傍聴する、市民活動に参加するなど、民主主義を支える行動を通じて、社会の不正や腐敗に対して声を届けることができます。政治を「誰か任せ」ではなく、「自分ごと」として捉える姿勢が求められます。
寄付や支援を行う
国際NGOや人権団体など、平和や公正を支援する活動に寄付することも一つの方法です。また、災害や紛争地域の子どもたちを支援するプログラムに参加することで、遠くの誰かの未来に手を差し伸べることができます。
終わりに
「平和と公正をすべての人に」という目標は、すべてのSDGsの土台となる基本的な価値です。平和なくして持続可能な社会は築けず、公正なくして誰もが活躍できる未来は訪れません。たとえ小さな行動であっても、一人ひとりの意識と選択が、社会をより良く変える力になります。今日からできることを見つけ、共に「誰ひとり取り残さない」世界を目指しましょう。

KENNY
Kenny
Webライター
名古屋市在住。 グルメメディアのライター/エディターとして活動するかたわら、環境問題にも取り組むITプロダクト会社に勤務。 持続可能なデジタル社会に興味を持ち、Web3分野を勉強中。