持続可能な開発目標(SDGs)の第9項目「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、持続可能な産業化とイノベーションを促進し、強靭なインフラを整備することを目的としています。本記事では、世界と日本の産業基盤の現状、直面している課題、各国の先進的な取り組み、そして私たちが日常生活の中でできることについて解説します。
産業・インフラ・技術革新の現状
世界の産業インフラ事情
道路、橋、通信、電力、鉄道などのインフラは、経済や社会の発展に欠かせない基盤ですが、現在でも多くの発展途上国ではこれらのインフラが不十分です。特にアフリカや南アジアでは、電力の安定供給が難しく、製造業や医療現場に大きな支障をきたしています。
また、技術革新の恩恵も十分に行き渡っておらず、多くの地域でインターネット接続が不安定だったり、製造技術の導入が遅れているなどの課題を抱えています。
日本の状況
日本は世界でも有数のインフラ整備国家であり、新幹線や高速道路、安定した電力供給など、非常に高い水準を誇ります。しかし一方で、老朽化したインフラの維持・更新が大きな課題となっており、特に地方では過疎化による維持コストの増大が問題視されています。
さらに、製造業の競争力低下や、スタートアップ支援の不足、デジタル化の遅れなど、技術革新の面でも課題が指摘されています。
主な課題
インフラへのアクセスの格差
都市部と農村部、発展途上国と先進国の間では、インフラへのアクセスに大きな差があります。電力が24時間使えない地域、交通手段が極端に限られている地域では、産業の発展が大きく妨げられています。
老朽インフラの問題
特に日本や欧米諸国では、戦後に整備されたインフラの多くが耐用年数を超えており、老朽化が進んでいます。橋やトンネルの崩落事故なども報告されており、安全性の確保と更新予算の確保が急務となっています。
(引用:国土交通省HP)
イノベーションの地域格差
AIやロボティクス、再生可能エネルギー技術などの先進的なイノベーションは、都市部や特定の先進国に偏りがちです。開発途上国や地方都市では、これらの技術にアクセスすることが難しく、「デジタル・ディバイド」が広がっています。
環境と調和した産業化
産業の発展は環境負荷を伴うことが多く、持続可能な形での工業化が求められています。特にCO2排出を抑えながらの製造業の発展は、今後の地球環境保全にとっても極めて重要です。
各国の取り組み
ドイツの「インダストリー4.0」
ドイツでは「インダストリー4.0」という国家戦略のもと、IoT(モノのインターネット)やAIを活用したスマートファクトリーの導入が進められています。これにより、生産の効率化と柔軟性の向上が図られ、競争力のある製造業の維持に成功しています。
ルワンダのデジタル化政策
アフリカのルワンダでは、国家主導でICTインフラの整備が進められています。全国民にインターネット接続環境を整え、教育や医療、行政サービスのオンライン化を推進。「アフリカのシンガポール」とも呼ばれるほど、急速な技術革新を遂げています。
(引用:総務省HP)
日本のスタートアップ支援
日本でも近年、スタートアップ企業の成長支援が強化されています。経済産業省の「J-Startupプログラム」や自治体のアクセラレーションプログラムにより、AI、バイオテック、環境テックなど、多様な分野での革新的事業の育成が行われています。
私たちにできること
国産製品・地域企業の応援
地元で作られた製品や中小企業のサービスを積極的に利用することで、地域の産業基盤の維持・活性化に貢献できます。
テクノロジーに関心を持つ
AIやIoTなどの新技術について学び、それらを活用する力を身につけることは、個人としても社会全体としても技術革新を支える原動力になります。
デジタル格差をなくすための支援
使わなくなったデジタル機器の寄付や、IT教育支援団体への協力は、情報格差の解消に繋がります。また、地域でのITサポートボランティア活動なども有効です。
SDGsを伝える
身の回りの人にSDGsの重要性を伝えたり、SNSで「産業と技術革新」の取り組み事例をシェアすることで、社会全体の関心を高めることができます。
終わりに
「産業と技術革新の基盤をつくろう」という目標は、経済成長だけでなく、格差の是正や持続可能な社会の構築にも直結しています。国や企業の取り組みに加え、私たち一人ひとりが日々の生活の中で産業や技術の未来を支える行動をとることが、より良い社会の実現につながります。まずは身近なところから、一歩踏み出してみましょう。

KENNY
Kenny
Webライター
名古屋市在住。 グルメメディアのライター/エディターとして活動するかたわら、環境問題にも取り組むITプロダクト会社に勤務。 持続可能なデジタル社会に興味を持ち、Web3分野を勉強中。