眠る資源を掘り起こす。「アーバンマイニング」の可能性
アーバンマイニングとは?
「アーバンマイニング」とは、都市部で廃棄される家電製品などに含まれる金属を、鉱山に見立てて再資源化する考え方のことです。日本語では「都市鉱山」と呼ばれ、1988年に東北大学の南條道夫教授らによって提唱されたのが始まりとされています。
対象となる資源は、鉄や銅など「ベースメタル」、金や銀といった「貴金属」、そして現代の電子機器に欠かせない「レアメタル」の3つに大別されます。天然の金鉱石1トンから採れる金は約5グラム程度ですが、回収された携帯電話1トンからは約280グラムもの金が得られるとされ、天然資源よりも高品位な鉱脈と言われることもあります。
日本ではこの考え方を制度に落とし込んだ「小型家電リサイクル法」が2013年に施行され、身近な仕組みとして根づいています。

(引用:小型家電リサイクル協会)
なぜアーバンマイニングが重要なのか?
アーバンマイニングが重要視される背景には、鉱物資源のほとんどを輸入に頼る日本の事情があります。半導体や蓄電池、太陽光パネルなどに使われるレアメタルは、産地が特定の国に偏在しており、供給が不安定になりやすいという課題を抱えています。
また、天然資源の採掘には広大な土地の掘削が伴い、環境への負荷も小さくありません。使用済み製品からの回収は、こうした負荷を抑えつつ資源を確保できる点で意義があります。
さらに、電子廃棄物が適切に処理されず有害物質を発生させる問題は世界的にも指摘されており、アーバンマイニングは資源循環と環境保全の両面から期待されている取り組みなのです。

(引用:小型家電リサイクル協会)
世界と日本の取り組み
ヨーロッパでは、2024年に施行された「重要原材料法(CRMA)」のもと、2030年までに戦略原材料のリサイクル量を域内需要の25%まで高める目標を掲げています。2025年には金属リサイクルを含む戦略的事業47件が初認定され、域内でのリサイクル基盤づくりが本格化しています。
アメリカでは、重要鉱物の国内リサイクルを後押しする政策のもと、鉱業廃棄物からのレアメタル回収を進める企業に税制優遇が与えられるなど、都市鉱山産業への支援が広がっています。
日本では、環境省が都市鉱山からの金属回収量を2030年度までに倍増させる方針を掲げています。象徴的な事例が「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」です。全国の自治体で回収された小型家電78,985トンから、東京2020大会の金・銀・銅メダル全ての原料がまかなわれました。

(引用:高知県公式HP)
私たちにできること。眠る鉱山を差し出す一歩
アーバンマイニングと聞くと、国や企業が担う大規模な話のように感じられるかもしれません。しかし、その資源は私たちの家庭にも眠っています。
たとえば、使わなくなったスマートフォンやデジタルカメラを、自治体の回収ボックスや認定事業者に届けること。それだけで、貴重な金属資源が新たな製品へと生まれ変わる道が開かれます。
パソコンについては、メーカーやパソコン3R推進協会が回収を行っており、郵便局を窓口とした返却も可能です。買い替えの際に「捨てる」ではなく「戻す」を選ぶこと。その小さな選択が、都市鉱山を支える一歩になります。
掘らない鉱山が支える未来
アーバンマイニングは、地面を掘る代わりに、暮らしの中にすでにある資源を見つけ直す試みです。それは、資源の乏しい国だからこそ育まれてきた知恵と言えるでしょう。
引き出しの奥に眠る古い携帯電話が、いつか誰かのメダルや部品になる。そんな循環は、決して大げさな未来像ではありません。
都市そのものが鉱山になる時代。私たちの手の中にも、次の資源が静かに眠っているのかもしれませんね。
KENNY
Kenny
Webライター
名古屋市在住。 グルメメディアのライター/エディターとして活動するかたわら、環境問題にも取り組むITプロダクト会社に勤務。 持続可能なデジタル社会に興味を持ち、Web3分野を勉強中。