フードフォレストとは?
「フードフォレスト(Food Forest)」とは、果樹やナッツ、野菜、薬草などの食べられる植物を、森のような多層構造で育てる**持続可能な農業の手法**のことです。日本語では「食べられる森」と呼ばれることもあります。
この手法は、森林が持つ自然な階層構造をお手本にしています。高木の果樹を最上層に、低木、ハーブ、地被植物、根菜、つる植物までを組み合わせて植えることで、農薬や肥料に頼らずとも、植物同士が支え合いながら育つ環境をつくり出します。 「農業」と「林業」を組み合わせた「アグロフォレストリー」や、自然の仕組みを生かす「パーマカルチャー」という考え方とも深く関わっています。実践の規模は、個人の庭先のプランターから地域ぐるみの農地まで幅広く、各地でその土地の気候や植生に合わせた形が模索されています。

(引用:ELEMINIST)
フードフォレストが注目される理由
世界の人口増加や都市化が進むなか、既存の農地だけで食料を安定的に確保することが難しくなりつつあります。加えて、山間部の畑作や単一栽培は、土壌流出や耕作放棄地の増加といった課題も抱えています。 フードフォレストは、こうした課題に対し、森の力を借りることで応えようとする試みです。多様な植物を組み合わせることで、農薬や化学肥料への依存を減らしながら、土壌の保水力や生物多様性を高めることができます。
また、収穫までに数年かかる樹木もあれば、初年度から収穫できる野菜もあるため、時間軸の異なる作物を組み合わせることで、長期的に安定した収入を見込める点も注目されています。耕作放棄地の再生や、都市の空き地を活用した緑化にもつながる可能性を秘めています。
世界と日本の取り組み
ヨーロッパでは、パーマカルチャーの考え方をもとにしたフードフォレストづくりが盛んで、家庭の庭先から地域の共有農地まで、幅広い規模での実践が広がっています。
アメリカでは、都市部の空き地を活用したプロジェクトが各地で立ち上がっており、果樹や低木、草本植物を組み合わせた「食べものが実る公共空間」づくりが進んでいます。
アジアでは、ネパールやインドネシアなど山間部を抱える国々で、森林伐採や土壌流出への対策として、アグロフォレストリーの技術が活用されています。
日本でも、農林水産省が「みどりの食料システム戦略」を掲げ、環境負荷を抑えた栽培体系への転換を後押ししています。福岡県糸島市では、耕作放棄地となったみかん山を舞台に、無農薬・無肥料で甘夏を育てる「糸島 food forest」の取り組みが進められています。また、ソニーコンピュータサイエンス研究所が提唱する「協生農法」も、森の仕組みを応用した日本発の農法として注目を集めています。

(引用:サスティナブルブランド)
小さな森を暮らしに
フードフォレストと聞くと、大掛かりな農業プロジェクトのように感じられるかもしれません。しかし、その考え方は、私たちの暮らしのすぐそばにも取り入れることができます。 たとえば、ベランダのプランターで、果樹や野菜、ハーブを一緒に育ててみること。日当たりのよい場所さえあれば、小さな「タイニーフードフォレスト」を始めることができます。
また、地域のコミュニティガーデンや市民農園に参加することも、身近な一歩になります。多様な植物が共に育つ様子を見守る時間は、食と自然のつながりを実感するきっかけになるでしょう。 食べものがどこでどう育てられているのかに関心を持つこと。それ自体が、持続可能な農業を支える力になります。
森から生まれる、これからの食卓
フードフォレストは、自然の仕組みに逆らうのではなく、寄り添うことで食べものを得るという、ひとつの知恵の結晶です。 効率だけを追い求めてきた農業のあり方を、少しだけ立ち止まって見直してみる。そこには、森と人が共に育つ、静かな豊かさがあるのかもしれません。 いつか、私たちの暮らす街のあちこちに、食べられる森が広がる日が来るのかもしれませんね。
KENNY
Kenny
Webライター
名古屋市在住。 グルメメディアのライター/エディターとして活動するかたわら、環境問題にも取り組むITプロダクト会社に勤務。 持続可能なデジタル社会に興味を持ち、Web3分野を勉強中。