持続可能な開発目標(SDGs)の第10項目「人や国の不平等をなくそう」は、国の内外における格差を是正し、すべての人が平等にチャンスを得られる社会を実現することを目指しています。本記事では、世界と日本の不平等の現状、直面している課題、各国の取り組み、そして私たちが日常生活の中でできることについて解説します。
不平等の現状
世界の不平等
世界では、所得格差や教育機会の格差、性別や人種による差別など、さまざまな不平等が根強く存在しています。たとえば、最も裕福な1%の人々が世界の富の半分以上を保有している一方で、極度の貧困状態にある人々は依然として数億人にのぼります。
さらに、移民や難民、障がい者、LGBTQ+の人々など、社会的に弱い立場にある人々が差別や排除を受けやすく、教育・医療・就労の機会を奪われる事例も多く報告されています。多くの人が「自分の力では変えられない壁」に直面しているのが現実です。
日本の不平等
日本では一見、平等な社会が実現しているように見えるかもしれませんが、実際には非正規雇用と正規雇用の格差、女性の社会進出の遅れ、外国人労働者に対する差別、高齢者と若年層の経済格差など、様々な「見えにくい不平等」が存在しています。
(引用:内閣府 男女共同参画局)
特に都市部と地方の経済格差、外国にルーツを持つ子どもの教育環境などは、深刻な社会課題として注目されています。また、災害やパンデミック時には、弱い立場にある人々が最も影響を受けやすく、不平等の連鎖が加速する傾向にあります。
主な課題
所得と雇用の格差
高収入層と低収入層の差が広がっており、特に非正規雇用者の生活は不安定です。十分な収入を得られないことで、教育や医療などの基本的なサービスへのアクセスも難しくなります。若者の中にも、「頑張っても報われない」と感じる層が増えており、社会全体のモチベーション低下にもつながっています。
(引用:厚生労働省)
教育機会の不均等
家庭の経済状況によって、子どもが受けられる教育の質や進学の可能性に差が出ています。日本でも奨学金を利用しなければ進学できない学生が多く、教育の機会が平等とは言い切れません。また、発展途上国では女の子が学校に通えないケースも多く、ジェンダー格差の問題と直結しています。
差別と偏見
人種、性別、性的指向、障がい、国籍などを理由に差別を受ける人が後を絶ちません。これにより、本来持っている能力や可能性が発揮できず、社会的な排除につながっています。近年ではSNS上での誹謗中傷など、目に見えにくい「デジタル差別」も問題となっています。
国際間の格差
先進国と途上国の間で経済的・技術的な格差が広がり、開発途上国は経済成長や医療・教育の発展に遅れをとっています。この格差が貧困や紛争、移民問題などを引き起こす一因にもなっています。グローバルな視点での再分配と技術支援が求められています。
各国の取り組み
スカンジナビア諸国の福祉政策
スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国では、教育・医療・育児支援を無償で提供し、所得に関係なく誰もが平等なサービスを受けられる体制が整っています。高所得層への課税を強化し、再分配を行う仕組みが社会的に受け入れられているのが特徴です。
カナダの多文化共生政策
カナダは多民族国家として、多様な文化や宗教的背景を持つ人々の共存を促進する政策を展開しています。移民政策に寛容でありながらも、差別に対しては厳格な対応を行い、すべての人が平等な権利を持つことを基本としています。
日本の外国人支援
日本では近年、外国人労働者の受け入れが増加する中で、地域コミュニティによる日本語教育や生活支援、行政手続きのサポートなどが広がりつつあります。また、自治体単位での共生社会モデルの構築や、外国人児童向けの教育支援なども進められています。
私たちにできること
多様性を受け入れる姿勢を持つ
身近なところでの偏見や差別に気づき、それをなくす行動をとることが重要です。SNSや日常会話の中でも、多様な価値観や生き方を尊重することを意識しましょう。「ちがう」ことを否定せず、「ちがい」を理解しようとする姿勢が、平等な社会づくりの第一歩です。
フェアトレード商品を選ぶ
発展途上国の労働者に公正な対価を支払うフェアトレード商品を選ぶことで、経済格差の是正に貢献できます。チョコレートやコーヒー、衣料品など、身近な商品から選ぶことができます。少しの選択が大きなインパクトを生むのです。
教育・支援団体に参加・寄付する
経済的に困難な子どもや障がい者、移民などを支援する団体への寄付やボランティア活動は、直接的に不平等の解消につながります。自治体やNPOが主催する活動に参加することで、地域社会の課題にも関われます。
情報発信を行う
不平等の現実や改善のためのアイデアをSNSなどで発信することで、周囲の人々の関心を高めることができます。特に若い世代への啓発は、社会全体の意識を変える力になります。小さな「いいね」や「シェア」も、連帯の一歩になります。
終わりに
「人や国の不平等をなくそう」という目標は、単なる経済問題ではなく、すべての人が人間らしく生きるための基本的な権利に関わるテーマです。自分とは違う立場にある人の声に耳を傾け、小さな行動から格差是正に取り組むことで、誰ひとり取り残さない社会に近づいていくことができます。今日からできる一歩を、一緒に踏み出してみましょう。

KENNY
Kenny
Webライター
名古屋市在住。 グルメメディアのライター/エディターとして活動するかたわら、環境問題にも取り組むITプロダクト会社に勤務。 持続可能なデジタル社会に興味を持ち、Web3分野を勉強中。