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海の底の見えない罠。「ゴーストフィッシング」とは

Kenny
| 2026/07/15
ゴーストフィッシングは、海に流出した漁具が持ち主を離れ、魚や海洋生物を捕らえ続けてしまう現象。海洋プラスチック問題の一つとして、いま静かに注目されています。

ゴーストフィッシングとは?

「ゴーストフィッシング(Ghost Fishing)」とは、漁業者の管理下を離れた漁網やかごなどの漁具が海中に残り、意図せず海の生きものを捕らえ続けてしまう現象のことです。日本語では「幽霊漁業」と呼ばれることもあります。

人の手を離れたあとも、漁具はまるで幽霊のように海を漂い、ひとりでに“漁”を続けてしまう。その様子から、この名前がつけられました。流出した漁具そのものは「ゴーストギア(幽霊漁具)」と呼ばれます。

問題の根っこにあるのは、漁具の素材です。漁網やロープは、潮や魚の歯、悪天候に耐えられるよう、丈夫なプラスチックや化学繊維でつくられています。頑丈であるがゆえに、海に出たあとも数十年、ものによっては数百年にわたって分解されず、漁獲の機能を持ち続けてしまうのです。

とくに問題視されているのが、刺網とかご漁具です。壁のように仕掛ける刺網や、閉じた空間に生きものが入り込むかごは、流出後も長く生物を捕らえ続けやすいとされています。ゴーストフィッシングは、海洋プラスチック問題と生物多様性の危機が交わる場所に立つ、見えにくい課題と言えるでしょう。

(引用:WWF Japan

 

ゴーストフィッシング引き起こす問題

ゴーストフィッシングが見過ごせないのは、その影響が長く、広く続くからです。
世界では、海洋ごみによってウミガメの全種、海洋哺乳類の約3分の2の種、海鳥の約半数の種が被害を受けているとされ、その一因がゴーストギアだと考えられています。網に絡まった生きものは身動きが取れなくなり、衰弱していきます。

海に流れ出るゴーストギアの量は、年間で数十万トンから百万トン規模にのぼると推計されています。海洋ごみ全体の少なくとも1割ほどが漁業由来ともいわれ、決して小さな割合ではありません。

課題は生態系だけにとどまりません。ゴーストギアが船のスクリューに絡まれば事故の原因になり、海底のサンゴや藻場を覆えば生きものの住みかそのものが失われます。本来なら資源となったはずの魚が無駄に失われることで、漁業者の収入や地域経済にも影響が及びます。

それでも、悲観するばかりではありません。原因が「人のつくった道具」である以上、設計や回収の工夫しだいで減らせる余地があるからです。問題の輪郭がはっきりしているからこそ、打ち手も見えやすいテーマなのです。

(引用:gooddo

 

世界と日本の取り組み

ヨーロッパでは、漁具を製品ライフサイクル全体で管理する動きが進んでいます。EUは使い捨てプラスチック指令などを通じて、漁具の回収やリサイクルの責任を製造・流通側に広げる仕組みづくりを求めています。

国際的な連携の中心にあるのが、2015年に発足した「GGGI(グローバル・ゴースト・ギア・イニシアティブ)」です。各国の政府・企業・NGOが参加し、漁具の流出防止技術の普及や回収、政策提言、ガイドライン策定に取り組んでいます。近年は日本の海洋コンサル企業も加盟し、国境を越えた協働が広がっています。

日本でも動きは着実です。政府は2019年に関係9省庁で「プラスチック資源循環戦略」を策定し、同年には「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」を採択しました。

水産庁は、漁業界とともに「漁業におけるプラスチック資源循環問題に対する今後の取組」をまとめ、使用済み漁具の適正処理、生分解性素材の漁具開発、漁業者による海洋ごみ回収の促進などを進めています。回収した漁網を家具や文具にアップサイクルする地域プロジェクトも各地で生まれ、資源循環の輪が広がりつつあります。

 

海とつながる小さな選択

ゴーストフィッシングは、遠い海の話のように感じられるかもしれません。しかし、私たちの暮らしとも静かにつながっています。

たとえば、釣りを楽しむとき、糸や仕掛けを海に残さず持ち帰ることは、それ自体がゴーストギアを一つ減らす行動になります。回収漁網からつくられた製品を選ぶことも、資源循環を後押しする一票です。

環境に配慮した水産物を選ぶという選択肢もあります。持続可能な漁業の認証がついた魚介を手に取ることは、海にやさしい漁のあり方を応援することにつながります。

そして、地域の海岸清掃や、自治体・企業の回収プロジェクトに関心を持つこと。完璧を目指す必要はありません。小さな行動が重なっていくことが、見えない罠を少しずつほどいていく力になります。

 

手放した道具の、その先へ

ゴーストフィッシングは、便利な道具が人の手を離れたとき、何が起こるのかを教えてくれる現象です。それは単なる海洋ごみの話ではなく、私たちがつくったものに、最後まで責任を持てるかという問いでもあります。

海の底に沈んだ一枚の網が、静かに生きものを捕らえ続ける。その光景を想像するとき、道具のゆくえに少しだけ思いを馳せる人が増えるかもしれません。

手放したあとの世界にまで、まなざしを届けること。ゴーストフィッシングという言葉は、海と人との関わり方を、そっと問い直すきっかけになるのかもしれませんね。

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| 2026/07/15
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Webライター

名古屋市在住。 グルメメディアのライター/エディターとして活動するかたわら、環境問題にも取り組むITプロダクト会社に勤務。 持続可能なデジタル社会に興味を持ち、Web3分野を勉強中。

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