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教えて!高津先生!vol.1|事業系食品ロスの実態

Kenny
| 2024/01/21
国連WFPによると、紛争や経済ショック、気候危機、肥料価格の高騰などで、世界には明日の食事さえままならない国々がまだまだ多く存在しています。先進国においてもその問題が解決しているわけではなく、この日本...

国連WFPによると、紛争や経済ショック、気候危機、肥料価格の高騰などで、世界には明日の食事さえままならない国々がまだまだ多く存在しています。先進国においてもその問題が解決しているわけではなく、この日本においても食料問題はまだまだ根強く残っています。

その中でもまだ食べられるものにも関わらず捨てられてしまっている「食品ロス」について正しい認識を持つために、特定非営利活動(NPO)法人日本もったいない食品センターの高津 博司(こうず ひろし)さんを先生として迎え、お話を伺いました。

 

高津博司
NPO日本もったいない食品センター 代表理事

愛媛県川之江市で生まれる。神戸の高校を卒業後、海上保安学校に入校、9年勤めたあと退官し、会社設立(総合商社)。 商社の業務で食品ロスの現状を目の当たりにする。商社で行っていた慈善事業(災害救援物資支援、生活困窮者支援)を引き継ぎ、2017年2月食品ロス削減と生活困窮者支援(貧困解決)に向けたNPO法人日本もったいない食品センターを設立。

NPO法人日本もったいない食品センター

 

「食品ロス」ってそもそもなに?

——聞いたことのある人も多いと思うのですが、「食品ロス」とは実際どういったものなのですか?

簡単にいうと、食べられるのに捨てられてしまうものを「食品ロス」といいます。例えば、買ったのに食べずに捨てたものや、食べ残したもの、料理で使える部分を捨ててしまったり。また食品の製造工程で廃棄されたものや、商品として販売したもので捨ててしまったものも食品ロスにあたり、農林水産省の調べでは、食品ロスは令和4年だけで年間約522万トンにも及ぶと統計が出ています。

 

(引用:https://www.mottainai-shokuhin-center.org/now/)

 

——520万トン…。ものすごい数字なのはわかりますが、いまいちピンとこないです…。

これは赤ちゃんを含めた全日本人が1人当たり毎日お茶碗1杯分のご飯を捨てていることと同じで、年間でいうと1人当たり42キロもの食べられるはずの食品を捨てていることになっているのです。もったいないですよね。

 

——毎日ですか…。想像するとなんだかゾッとしますね。そしてもったいない。

ただ、年間522万トンすべてが家庭から出ている食品ロスではなく、食品ロスには「家庭系食品ロス」と「事業系食品ロス」という2つが存在します。

家庭系食品ロスは文字通り各家庭で廃棄されている食品を指し、事業系食品ロスとは事業活動に伴って発生する食品の廃棄を指します。

※(引用:https://www.env.go.jp/recycle/foodloss/general.html グラフは令和3年のもの)

 

——家庭系食品ロスもかなり多いのですね。

なぜ家庭の食品ロスが多いかというと、まずは食品ロスに関して「正しい知識」がないこと。まだ食べられる、あるいは食べられる箇所があるのに知識がないことで捨ててしまっていたりしています。そのため僕らは個人の人たちに対して正しい知識を身につけるための啓発活動を行なっています。賞味期限と消費期限の違いや、自分たちはこれだけ廃棄しているんだよと知ってもらうことで、「もったいない」という「意識」が生まれます。

この「知識」と「意識」を高めてもらうことができれば、家庭から出る食品ロスはもっと減らせるのではないかと考えて活動しています。

もう1つは食品の「管理能力」が足りないこと。買ってきた食品を冷蔵庫で保管すると思うのですが、野菜や肉などの消費期限の早いものは保管している間に傷んでしまったり、作って保存していたものも美味しく食べられなくなってしまったら捨ててしま。缶詰などの備蓄品は長持ちするがゆえに忘れ去られてしまったりと、買った食品を計画的に消費しないことで食品ロスが生まれています。

なので、今ある食材を把握して、それをどうやって消費するのか。料理アプリなどのサービスを利用しながら正しく消費することが大事なんです。

「事業系食品ロス」の実態とは?

——事業系食品ロスについてどういったものがあるのか教えてください。

農林水産省の事業系食品ロスの分類には「食品製造業」「食品卸売業」「食品小売業」「外食産業」とあります。つまり食品を主に取り扱う会社から集計しており、これは言い換えると食品を普段取り扱っていない会社が廃棄した食品は、数字に反映していないということになります。

そう言った食品の廃棄も各自治体の焼却炉ごとに集計することもできなくはないと思いますが、そもそも国が管理しているわけではないため、正確にはわからないのが現状です。

 

——なるほど。食品を普段取り扱わない会社の廃棄というのは、どういったものが挙げられますか?

例えばコロナ禍でさまざまなイベントなどが中止になってしまい、消費できなくなった食品が大量に捨てられたりなどです。

食品を取り扱わない会社でも、販促品として食べ物を配布したり、会社でお弁当を出したりしますよね?これは食品を仕入れとして計上しているのではなく、広告費や販促費などで購入しているので、捨ててしまっても分からないんです。

各企業や国が保管している災害備食蓄品も保管期限が切れたら廃棄されてしまったりしています。

 

——コロナ禍での食品ロスは特に多かったのでしょうね。

これだけでなく、農作物も形が悪いとか少し傷が入っているために市場やスーパーで陳列されずに捨てられてしまっていたり、陳列されている間に少し痛んでしまい、見た目が悪いからといって捨てられている食品が食品ロスとして集計されているかどうかも曖昧。

なので農林水産省が掲載している数字よりも事業系食品ロスは実際は多いのが現状です。

(引用:https://www.mottainai-shokuhin-center.org/calculation/)

 

——食品流通の過程でも多くの食品ロスが生まれているのですね。

日本の消費者は世界的に見てもかなり厳しく品質を求める傾向があり、安心安全の観点から賞味期限が短かったり、消費者の手に渡るまでの加工工程が増える結果、多くの食品廃棄が生まれています。

 

私たちにもできる!食品ロス減少のためのファーストステップ

——食品ロスを減らすために、私たち一人ひとりができることを教えてください。

一般の人たちにもできるものとして大きく3つあります。

 

①正しい意識と知識を身につけること。

まず捨てる前に「果たしてこれはもう食べられないものなのか」と一歩立ち止まって考えること。そして賞味期限や消費期限の違いや、食べられる部分の適切な知識を身につけたり献立などを計画することで、廃棄する食品の量が減りますし、余っている食品を上手に消費するために料理のレパートリーを増やすこともいいですね。

また、食べられないものも食品ロスとして申告している可能性もあります。そうなると実際の家庭系食品ロスの集計は実はもっと少なかったりするんですよね。

 

②容器を移し替えたり、適切な保管を行う。

賞味期限が残っているにも関わらず、適切に保管ができていないことで賞味期限前に食べられなくなってしまったりするものも多くあるため、ラップをしたり容器を移し替えて冷蔵や冷凍保存することで細菌の繁殖を抑え、食品を長持ちさせることが大切です。

また冷蔵庫の中を把握・管理することで余分な食品の購入を防いだり、透明な容器に入れて保管したりすると中身が見えるので食事の際や料理をする際に意識しやすくもなるので、財布にも優しい。

 

③乾燥させる。

種類は限られますし家庭では難しいものかもしれませんが、これも細菌の増殖を抑える効果があり、より食品を長持ちさせることができます。

 

 

自分たちができることからまず始めよう

自分たちが何気なく気軽に捨てていた食品が、実は国全体でこんなにも大量の食品ロスになっているということは衝撃でした。話を聞いたり調べたりしないとなかなか思い至らないですが、すべてを知らなくても、始めることで知るきっかけになっていくのだと思います。

 

なにより食品ロスを意識することは環境にやさしいだけではなく、日々の食事を楽しめたり、財布にもやさしく、人々が豊かな生活を送るためにも必要な知識なのではないかと思います。

 

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Webライター

名古屋市在住。 グルメメディアのライター/エディターとして活動するかたわら、環境問題にも取り組むITプロダクト会社に勤務。 持続可能なデジタル社会に興味を持ち、Web3分野を勉強中。

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