教えて!高津先生!vol.2|賞味期限ってそもそもなに?
食品ロスの実態を高津さんから「毎日国民が茶碗1杯分の食品を捨て続けている。」と聞き、私たちはこんなにも食品を捨ててしまっているのかと衝撃をうけました…。
まだ食べられる食品を正しく消費するために、今回は「賞味期限」について教えていただきます!
愛媛県川之江市で生まれる。神戸の高校を卒業後、海上保安学校に入校、9年勤めたあと退官し、会社設立(総合商社)。 商社の業務で食品ロスの現状を目の当たりにする。商社で行っていた慈善事業(災害救援物資支援、生活困窮者支援)を引き継ぎ、2017年2月食品ロス削減と生活困窮者支援(貧困解決)に向けたNPO法人日本もったいない食品センターを設立。
賞味期限ってそもそもなに?
——普段混同しがちな賞味期限と消費期限ですが、具体的に何が違うのか教えてください。
・賞味期限
まずは教科書通りのような言い方をすると、美味しく食べられる期限が賞味期限といいます。具体的にいいますと、作り手やメーカーが保証している「安全に美味しく食べられる期限」。
長いものだと缶詰やレトルト食品のように2年から3年、もっといえば防災備蓄品のように5年から7年というものから、冷蔵の乳製品などのように7日程度の賞味期限と、消費期限に近いものもあったりと商品の性質によってかなり差があります。
・消費期限
比較的、品質の劣化が早いものや品質の変化が激しい、つまり腐りやすいものに決められた期限です。たとえば生肉や生魚などの生鮮食品、あとは調理したてのパン屋お弁当にも消費期限が設定されています。
そして消費期限の原則として基本的に「当日お召し上がりください。」が原則ですが、なかには5日ほどの消費期限が設定されているものもあります。
(引用:NPO法人日本もったいないセンター公式HP)
——消費期限があるものは早く食べないといけない、賞味期限は過ぎたからといって食べられないわけではない、ということですね。
そうですね。特に消費期限はわかりやすいと思います。では「賞味期限が過ぎた食品の消費期限」はどうでしょう。実は賞味期限と消費期限を二重に記載したものは存在しません。しかしどちらかを設定しなければいけないようになっています。
なかには牛乳のように消費期限とも取れる賞味期限も存在していますが、では一体どのようにして賞味期限と消費期限を設定しているのでしょう。
賞味期限と消費期限はどう決めているのか。
——賞味期限と消費期限は一体どのようなルールで設定しているのでしょうか。
簡単にいうと「品質の変化が激しい食品」は消費期限を設定し、それ以外のものは賞味期限としているだけなのです。そして賞味期限は各メーカーが自社で設定しているものなので、基準値のようなものは他社や今までの情報から設定しているものとなります。
なかには「賞味期限10秒スイーツ」のような売り出し方をしている商品もあり、作り手が美味しく食べられる期限を保証するのが賞味期限なので、あながち間違いではないのですが、「美味しく食べられる期間が長いものを賞味期限としている」と考えると意味合いが違ってきます。
(引用:消費者庁HP)
——お店側が「この期限までが一番美味しいんだよ!」としているものということですね。
その通りです。しかしその場合は消費期限の「当日お召し上がりください。」という原則からすると、本来は消費期限を設定するのが望ましいんです。
——メーカーが美味しく食べられることを保証するのが賞味期限。安全を保証するのが消費期限ということですか?
賞味期限に関しても、賞味期限内のものであればメーカーが責任を負わなければいけないんですね。これは逆にいえば、本来1年や2年でも大丈夫なものでも、責任問題から賞味期限を短くしている場合もあります。もちろん消費者が適切な保管をしておらず、商品を食べて体調を崩してしまったりした場合は例外ですが。
では賞味期限をもっと長くしてもいいのでは?という声もありますが、メーカーが商品のすべてを製造しているわけではないんです。原材料はほかの会社から仕入れていたり、パッケージは外注していたり。
そうすると各原材料それぞれで会社が決めた賞味期限があるわけで、じゃあ使用している原材料で一番賞味期限が短いもので商品の賞味期限を判断しよう。というメーカーもあります。
——では適切に保管していれば多少賞味期限が切れていても美味しく安全に食べることができるものが多いのですね。
しかし「賞味期限が過ぎたものは食べたくない。」という人もたくさんいます。それは個人の自由ですが、食品ロスに関しての知識がない方も中にはいて、「賞味期限が過ぎたものは食べられない。」と思い込んでいる人も多くいます。
賞味期限が過ぎた後の消費期限はいつまでなのか。ということでいうならば、賞味期限を過ぎても美味しく食べられる期間があり、やがて風味が落ち、そして食べられないものとなります。
私たちは食べられなくなる前に、美味しく食べられるかという基準で取り扱う食品を実際に試食をしたり、メーカーやパッケージの安全性、保管状況や季節などを精査し、食品ロス削減ショップ「エコイート」の店頭と食糧支援で取り扱う食品を賞味期限を過ぎても美味しく食べられる期間中に消費し、食品ロスを減らす活動をしています。
「エコイート」とは?
NPO法人日本もったいないセンターが運営する食品ロス削減ショップ「エコイート」では、廃棄予定の飲料や食品を買取る、または無償で引き取り、その中から賞味期限の残り期間にかかわらず安全かつ美味しく食べてられる食品を取り扱っています。
(お話いただいている高津さん)
流通業界の賞味期限「3分の1ルール」とは?
——食品を取り扱うメーカーはどういう基準で出荷、販売しているのでしょう?
食品の流通には3分の1ルールというものが存在します。
それは、たとえば賞味期限が実際は6か月のものがあるとします。これは食品を製造するメーカー、それを卸売する会社、そしてスーパーを経由し、消費者が購入する流れの中で
①メーカーが製造してからスーパーに納品するまでに賞味期限の3分の2にあたる4か月を残していないと、スーパーに納品してはいけない。
スーパーが食品を販売する際、賞味期限の3分の1を過ぎてしまった食品は店頭では販売してはいけません。
というルールで、賞味期限を残した食品のロスにつながっている一面もあります。
お客様の安心安全のため、メーカーやスーパーのブランド維持のためなど、さまざまな側面がそういったルールを作ったのでしょう。
(引用:消費者庁)
——賞味期限が残っているのに、なんだかもったいない…。
このルールは食品流通に関わる会社間で2分の1ルールを採用するところも増えてきていて、メーカーからスーパーに納品するまでに賞味期限が2分の1にあたる3か月、その後の販売期限は販売店が決めるような動きもあります。賞味期限を見直し、今までよりも長く設定しているメーカーさんも増えてはきていますね。
そうした流通における賞味期限の取り扱いの中で、ルールからはみ出ているものの賞味期限が残っているものがディスカウントストアなどで安く取り扱われているのです。
しかしそうしたディスカウントストアでも、賞味期限ギリギリの食品はやはり廃棄されてしまっているのが現状です。
賞味期限と賞味期限を正しく理解する
——賞味期限を通じて私たちが食品ロスを減少するためにどういったことを知る必要があるのでしょうか。
「賞味期限や消費期限がが切れたものは食べたくない。」という方が多いことはお伝えしましたね。ただ期限が過ぎているから食べたくないと。実はそういった方も期限が過ぎているものを実際は食べていたりするんです。
たとえば「パン」。街中のベーカリーで販売しているパンは翌日も食べることがありますよね?これは単にコンビニのパンは無菌パッケージに入っていて、ベーカリーのパンはない、という違いのように見えますが、実際には消費期限を過ぎたとしても多くの方が食べているもののひとつで、むしろ焼き直せば購入した時よりも美味しく食べられたりします。
もちろん保存方法によって異なりますが、賞味期限と消費期限では食品の持つ安全性とおいしさに対するポテンシャルが圧倒的に違います。
つまり、消費期限を1日過ぎたものと賞味期限が1日過ぎたものを比較すると、賞味期限が過ぎてしまったものの方がおいしさや風味がより持続し、安全性が高いということ。
さらにいうと、やはり食品を正しく保管することで、美味しく食べられる期間を保つことができます。
こうしたことを知ってもらうことができれば、まだ食べられるものなのに捨てられてしまう食品ロスはもっと減少していくのではないかと思います。
KENNY
Kenny
Webライター
名古屋市在住。 グルメメディアのライター/エディターとして活動するかたわら、環境問題にも取り組むITプロダクト会社に勤務。 持続可能なデジタル社会に興味を持ち、Web3分野を勉強中。