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「サスティナブルなファッション」について考える

Kenny
| 2024/02/28
生活必需品であり、生活に彩りを添える役割を持つ「衣類」。特に日本は春夏秋冬に合わせて衣類を購入する機会がありますよね。 しかしその衣類も環境に大きな影響を与えているのです。果たしてその実態とは。

「サスティナブルな素材を使用した…〇〇」

インターネットで衣類を購入する際に最近よく目にするこのワード。「サスティナブルファッション」。

なんとなく分かります。プラスチックとか、そういうものを再利用した衣類のことですよね?

…。

なんだか自信がなくなってきたわたしは、この「サスティナブルファッション」について調べてきました。

衣類の大量供給と大量廃棄

ショッピングモールやインターネットの普及、そしてファストファッションと呼ばれる手頃な価格で衣類を販売するサービスが豊富にある現代において、気軽に衣類を購入する方も多いのではないでしょうか。かくいう私もその1人。

しかし簡単に衣類を手に入れられるのと同様に、衣類の廃棄も増加傾向にあると言われています。

経済産業省によれば、2022年に国内に供給された衣類は合計で79.8万トン。リユースリサイクルを除くと、一般家庭で廃棄されている衣類は48.5万トンという膨大な量の衣類が作られては捨てられています。

(引用:経済産業省資料2022年版

 

また環境省によれば、年間平均で国民1人当たり18枚の衣類を購入し、15枚をリユース、もしくは廃棄。着られることなくクローゼットで眠っている衣類が35枚もあるそうです。

 

(引用:環境省資料2022年版

 

…たしかに。と納得してしまうほど、私も心当たりがあります。

数字だけ見てもかなりもったいないことが起きていることがわかりますが、実は衣類の過剰供給、過剰消費、そして過剰廃棄の裏には個人のお財布事情だけにとどまらない深刻な環境問題と貧困に関わる問題が隠されているのです。

 

生産〜廃棄までの環境に対する影響

そもそも衣類がわたしたちの手元に届くまでには、原材料の生産から衣類の製造、流通のための配送を経由しています。これは生産量と供給量が増えれば必然的に増加するものです。

実際にわたしたちの手元に衣類が届くまでのプロセスを見てみましょう。

 

(引用:環境省資料2022年版

 

図で見てもわかる通り、いくつもの工程を経て衣類が作られているのですが、1つひとつの工程でCO2の排出や、製造する中で廃棄されてしまう素材が存在しています。さらに日本は輸入衣類が約98%が多く、それに対しての輸送に多くのCO2が排出されています。

なんだか怖くなってきました…。衣類が生産されるために必要となる環境負荷についても環境省の資料に記載がありました。

 

(引用:環境省資料2022年版

 

規模が大きすぎてピンとこないのですが、CO2の排出量でいえば、2019年以降に登録された乗用車1台が1キロ走るたびに排出するCO2は約138グラムというJETOROの統計があり、衣類の生産で生まれるCO2をこの統計で換算すると…。

 

90,000,000,000,000÷138=652,173,913,043

 

…。

簡単に言いますと、乗用車が652,173,913,043キロ走れるほどのCO2を衣類生産だけで排出しているということですね…。

これは年間3,000キロ車を使用する人がいるとすれば約2億2千万台が排出するCO2量ということです。

 

そして衣類1着が出来上がるまでに必要となるCO2や水資源はといいますと…。

 

(引用:環境省資料2022年版

 

つまりわたしたちが普段着用している衣類が生産されるために排出されるCO2や使用される水資源は1枚あたり…。

 

25.5キロ+2,300リットル(2,300キロ)=58,650キロ

 

以上の重量があると言っても過言ではないということですね。なんだか肩が重くなってきました…。

 

次は衣類が完成した後、私たちの手元に届き、そして廃棄されるプロセスを見てみましょう。

 

(引用:環境省資料2022年版

 

消費者として見るとごく自然の流れのように見えるのですが、ポイントはこのサイクルがとてつもなく短いスパンだということと、リペア・リユース・リサイクル、いわゆる3Rと焼却などの廃棄の比率。

ただ着るだけの衣類ならばなんだっていいわけですが、これだけ大量に衣類が生産されているのは、まさしくそれを選んで買っている人たちの「思想」なのではないかと思います。

しかし環境のためとはいえ、わたしたちだって裸で生きるわけにもいきませんし、センスのいい服を着たい…。でもファッションで環境にアクションを起こすことだってセンスがあるとは思いませんか

 

ファストファッションと貧困

「ファストファッション」とは、トレンドを取り入れた衣類が低価格で、かつ短いサイクルで入れ替わるものを指します。すべてのメーカーが該当するわけでは決してありませんが、低価格大量生産を実現している背景には低賃金で働く人たちがいることで成り立っているようです。

トレンドを取り入れることでスパンの短い商品生産が必要。これは製品の廃棄サイクルも同時に早くなっているということに繋がり、環境に対して大きなインパクトがあります。

そして大量に生産し、それを低価格で販売するためには、素材コストの削減や製造工程の短縮もそうですが、何より低賃金で働いている人たちがいるということに繋がっていきます。

数年前になりますが、バングラディシュの衣類生産工場が倒壊し、死者1000人以上、負傷者や行方不明者を合わせると4000人以上にものぼる事件がありました。

 

耐震性を無視した建物に多くの縫製工場と低賃金で働く労働者が入居し、結果として重さに耐えられず倒壊してしまった通称「ラナ・プラザの悲劇」。この問題はラナ・プラザだけではなく、他にも多く存在します。

低価格で販売されている衣類の中には、環境問題だけでなく貧困労働者の背景も存在するということですね…。

 

サスティナブルファッションでセンスを磨こう

サスティナブルなファッションを選択することは、環境保護だけでなく労働者の権利と生活条件の改善にも貢献します。

わたしたちが日常で行えるサスティナブルファッションの選択・行動としては次のような項目があります。

・今持っている衣類を大切にする

衣類を適切に洗濯したり、長く使用できるものを購入することで、商品の購入サイクルを抑えることができます。例えばブーツはすり減ってきたら捨てるのではなく、修理をするなど。それは環境だけでなく財布にも優しいアクションになると思います。

 

・使わなくなったらリサイクルや寄付に出す

今自宅のクローゼットで眠っている衣類を見直し、着ないようなものはリサイクルやリユースマーケットで販売する。これも環境にも財布にも優しいですね。大手衣類企業でも店舗にリサイクルボックスを設置していたりします。リサイクルや寄付された衣類は新しく素材として再生されるだけでなく、災害時や貧困国でも利用されるので、貴重な資源ですね。

 

・リユース品、リサイクル品を購入する

最近ではリユース商品を販売するサービスが実店舗やインターネットでも増えてきました。ものにもよりますが、新品で購入するよりも安価に購入でき、中には生産終了しているレアリティの高いものもあったりするので、利用者は増加傾向にあります。

 

・環境に配慮した商品、フェアトレードな商品を購入する

海洋プラスチックを再利用した靴や衣類が販売されていたり、環境負荷をできる限り抑えた衣類を販売するメーカーも増加傾向。

フェアトレード(適切な賃金を支払い、生産者の労働環境を守りながら製品を作ってもらい、販売する取引の総称)によって作られた商品を選択することで、海の先で衣類を生産する人たちの助けにもなります。

 

見た目がいいから、安いからというだけではなく、衣類が作られる背景や、サスティナブルファッションを意識して衣類を購入することで、本当の意味での「ファッションセンス」が身につくのではないでしょうか。

 

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Webライター

名古屋市在住。 グルメメディアのライター/エディターとして活動するかたわら、環境問題にも取り組むITプロダクト会社に勤務。 持続可能なデジタル社会に興味を持ち、Web3分野を勉強中。

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